人の意思決定プロセスの理解は、報酬系・情動系の脳内機構の解明だけでなく、その成果を感性工学的、神経経済学的な応用へ繋げる意義を有する。本年度は感性情報に基づいた意思決定プロセスを客観的に評価する実験パラダイムと解析方法の開発を目指し、動物モデルを用いた研究を実施した。 霊長類動物モデルによる実験:意思決定の感性情報処理に関わる神経基盤の解明を目指し、小型霊長類コモンマーモセットに報酬行動課題のトレーニングを行った。タッチパネルモニタ上に提示される視覚刺激に対して、動物が正しい選択行動を理解し、適切な応答をタッチ入力すると、報酬装置からジュースを与える報酬行動課題を構築した。飼育中の動物に対して、実験装置への馴化、報酬としてのジュースの価値付け、報酬を得るための選択行動の自発的学習について順次トレーニングを行った。このシステムに改良を加えながら、雌4頭にトレーニングを行い、すべてがこの報酬行動課題を習得した。実験中の選択行動の応答(タッチパネル入力、報酬装置作動)のタイミング等を行動観察用ビデオカメラを連動させて記録、解析した。 自由行動下の動物の生体電気活動(心電図あるいは脳波)をワイヤレスモニタリングシステムを用いて記録する環境と手法を整備した。その第一段階として麻酔下動物(ラット)の急性実験を行った。小型送信器の記録電極を胸部皮下に静置し、胸部誘導の心電図波形をワイヤレス記録した。また、小型送信器の記録電極を頭骨上に静置し、聴覚誘発電位の脳波波形をワイヤレス記録した。心電図については、術後24時間以内の自由行動下の動物からもワイヤレス記録を行った。
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