研究概要 |
本研究の目的は、感性情報の調和感の生成メカニズムを多層的にモデル化し、色彩を中間言語(媒介)とした感性情報の統合的管理手法を構築することにある。本来、色彩を含めた感性情報は、各々独立した印象群であり、個別の印象空間を持つと思われる。しかし、申請者のこれまでの研究成果によると、それらの印象空間はお互いに共通する部分空間を持つことが予測され、その部分空間の類似性が「調和感」と強い関係があるとの知見を得ている。このため平成23年度はまず、「調和感」が生成される刺激の選定と、感性情報の印象空間を構成する印象次元の抽出を行った。感性に対する表現用語(印象)の検討後に、色彩と香りのクロスモーダル印象空間を抽出するための第一段階として、色彩はPCCSトーンを使用して、120種類の香りとの関連をクラスター分析および因子分析により検討した。その結果、香りの印象による調和色、不調和色はトーンに影響されやすいことが示唆された。さらに香りと色が調和する際の脳活動はfMRIにより検討した。また音に対しては、音楽印象に大きく関わる調性と音域に着目し、刺激としてJ.S.Bach『無伴奏チェロ組曲 第一番』より冒頭部分2小節、M.P.Mussorgsky『組曲展覧会の絵:第一プロムナード』より冒頭部分4小節を長調の8つの調性(C,B,B♭,A,G,F,E,D)で変化させたものを用いてPCCSトーンとの関連を検討した。因子分析の結果、音域と潜在性因子に関係があることが示唆され、高音域に明清色トーン、低音域に暗清色トーンが調和するといった音域との対応関係が示唆された。研究会は2カ月に一回開催し、研究の討議・検討を重ねた。次年度からはクロスモーダルな印象空間の共通性に関する考察および印象の類似性による距離空間のモデル化を検討し、脳科学的手法によるモデル化と計算モデルの記述をめざす。
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