研究概要 |
1 e-Researchの実態 日本の研究者26名へのインタビューデータに関して詳細な内容分析を行い,その中から「データ共有」の実態と意識に関して,(1)共有対象となる研究データの種別,(2)研究分野の方法的特性,(3)研究者の社会的な立場という3視点からのモデルを構築した。この結果は原著論文として投稿する予定である。 2 学術コミュニケーションの電子化に関する実態 STM分野主要電子ジャーナル50誌の論文形式に関して,2011年1号に掲載された1383論文に関して調査し基礎的なデータを収集した。その後電子ジャーナルの形式を大きく変化させる雑誌が続いたため,本格的な調査の実施は来年度以降行うこととした。また,日本の学術雑誌の電子化状況調査に関しても調査が終了しきれなかったため,来年度以降も調査を継続し,成果をまとめることとする。 3 オープンアクセス状況に関する実態 1)一般人の専門情報への要求と探索:一般人が医療医学情報を実際にどれだけ探索しているかについての結果を論文として投稿し受理された。2012年7月号に掲載予定である。本年度はさらに,医療ではなく東日本大震災後に一般の人々が科学技術の専門情報全般に関してどれだけの情報要求をもったかについて全国1200人を対象とする質問紙調査を行った。結果として77%もの人が情報を必要とし,32%の人が実際に情報を探索した。テレビ番組とサーチエンジンが最も利用された情報源であった。今後成果は英語論文として投稿する予定である。 2)生物医学分野のOA動向:2006,2008,2010年に行った調査結果を再分析してその発展動向および調査方法に関する議論を論文にまとめているので,できるだけ早い段階でのこの結果を公表する。また2012年調査をほぼ同様の方法で約2000論文に関して実施し,現在データを確認,分析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日本におけるe-Researchの現状はまだそれほど進展していないという調査結果がでているが,これはほぼ想定通りであるので,今後新しい兆候をどう把握するかの方法の検討に入りたい。オープンアクセスの動向に関しては,複数の側面,観点から着実に成果が出ている。今後それらは成果公表を行うと同時に,新しい研究の方向性も十分探ってゆけると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
来年度はe-Researchの研究成果を発表すると共に,それに基づいてe-Researchに関する研究の方向性の検討を行いたい。日本全体としては情報共有もe-Researchもまだ普及しているとは言いがたい状況にあるため,e-Researchとはいいがたいが,関連する動きとして研究者によるデジタルメディア利用の実態まで枠組みを広げることを考えている。それによって,現在の研究のあり方と学術コミュニケーションの関連を探る研究の観点がみいだせるのではないかと考える。 オープンアクセス動向把握に関しては,着実に成果を積み重ねているので,英語論文での最新の成果公表だけでなく,日本国内でも多様なルートを使って広くまたわかりやすくその知識の普及につとめたい。
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