研究課題
大型類人猿の社会的知性をヒトと比較して知性の進化的基盤を探る目的で、視線を計測するアイトラッカーを手法とした実験的研究をおこなった。昨年度までに確立した実験方法に則り、他者の行為の理解について調べるために、モデルとなる人物が様々な種類の行為を演じるビデオ映像を見た際の視線の動きを記録した。これを、チンパンジーと、ヒト乳幼児を対象として実施し、比較データを得た。得られた視線データを、時系列に沿って解析し、低次の顕著性をもとにしたモデルと実際の視線との適合度を分析した。それによると、チンパンジーは動画中の色や動きなどの物理的特性に注目している割合が高いのに対して、ヒト乳幼児の場合はそうした物理的特性では視線の時系列変化をうまく説明できず、モデル人物の心的状態を推測するようなトップダウン的な情報処理がおこなわていることが示唆された。さらに、自己と他者、および既知の他者と未知の他者の境界の認知を探る試みとして、合成した顔に対する注視時間をアイトラッカーによって計測する実験をおこなった。自己顔、既知の他者顔、未知の他者顔の写真をそれぞれ素材として用意し、モーフィング技術によってこれらの顔の50%混合顔を合成してモニター上に提示した。その結果、まず、チンパンジーは、自己顔および既知の他者顔と未知の他者顔を明確に弁別していることが示された。そして、自己顔および既知顔には忌避的な視線を示すことが明らかとなった。さらに、既知顔と未知顔の50%合成に対しても、同様に忌避的な視線が認められた。これは、未知顔に対して強く注目する反応が見られたのと対照的である。仲間の個体およびその近親個体の似た顔に対してチンパンジーが敏感であることを示唆する結果と考えられる。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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PeerJ
巻: 1 ページ: e223
10.7717/peerj.223