研究課題/領域番号 |
23300106
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
西井 龍映 九州大学, マス・フォア・インダストリ研究所, 教授 (40127684)
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研究分担者 |
田中 章司郎 島根大学, 総合理工学研究科(研究院), 教授 (00197427)
前園 宜彦 九州大学, 数理(科)学研究科(研究院), 教授 (30173701)
増田 弘毅 九州大学, マス・フォア・インダストリ研究所, 准教授 (10380669)
二宮 嘉行 九州大学, マス・フォア・インダストリ研究所, 准教授 (50343330)
清水 邦夫 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (60110946)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | environmental statistics / spatial data / stochastic process / density estimation / non-parametric test / lasso / media science / directional statistics |
研究概要 |
(1) 森林被覆率をゼロインフレート分布および空間依存する logistic-normal 回帰分析により予測するモデルを提案した. また全球の弱い地震頻度に対する太陽風の影響を, ポアソン回帰や負の2項分布に基づく一般化線形モデルで検出した. (2) カーネル型密度関数推定量のエッジワース展開を求め,その有効性を数学的に示した.またカーネル型分布関数推定量の高次漸近理論を展開した.またその漸近理論を利用して,符号検定の連続化に成功し,有意確率の近似の精密化を求めた. (3) 回帰モデルの正則化推定 (高次元モデルの疎推定) において,統計的確率場に対する多項式型大偏差評価を導出した.自明な系として推定量の裾確率の多項式型一様評価が従い,特にbridge推定量などの,混合収束率を有する疎推定量の収束速度に関する評価が明らかとなった. (4) 推定と変数選択を同時におこなう正則化法として標準ツールとなりつつあるLASSOに対し,その最適な正則化パラメータを与えるためにAIC元来の定義に基づいた情報量規準を導いた. (5) 角度を含むデータの解析とモデル化を扱う方向統計学の研究を行った. 理論的側面に関しては、ハート型分布の拡張を行うと共に非斉次隠れマルコフモデルを提案し、応用的側面に関しては、環境統計学の立場から地震データや気象データを解析した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要 (1) について詳述する. 森林被覆率の非線形回帰モデリングについては, 提案したモデルを一般化加法モデルと比較して優位性を示し, Environmental and Ecological Statistics に発表した. また太陽風が地球の地磁気を攪乱するため, 結果として地震の引き金となっているのではないかとの仮説が20世紀後半から唱えられていた. これを証明するため幾人かが統計的アプローチを試みたが, 影響の有無に関する明確な結論は得られていなかった. ここでは太陽風の動圧, 速度等の9次元の物理量のdaily dataから, 全球でのマグニチュード4-4.9の地震頻度を予測した. モデルとして, ポアソン回帰や負の二項分布の平均およびsigma母数の時間遅れを持つ一般化線形モデルを用いた. その結果, 1) 地震による自己回帰性が強いこと, 2) 平均やsigma母数の説明変数として太陽風に関する物理量を追加すると, モデルの説明力が上がること, 3) またその係数は高度に有意であることが示された. 一方, 研究分担者は角度を含む環境時空間データの解析や関連したモデルの提案を行った. また回帰モデルの正則化推定について, LASSO型推定量の漸近的性質やモデル選択基準の提案, また密度推定に関する漸近的な理論的性質を導出している. 以上のことから本研究は予定通りの研究成果を上げていると自己評価する.
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今後の研究の推進方策 |
本研究の最終年度では, 地球環境や宇宙環境に関する時空間データへの統計モデリングを中心に次のように研究を進める. (1) 解析している地表面のメッシュデータには, 各メッシュをさらに細分化したメッシュでの標高 (DEM) が観測されている. 細分化されたDEMにより, 各メッシュの標高の平均や標準偏差等を説明変数として追加した時空間モデルを検証する. (2) 地表面の超高次元分光画像に基づき, 森林・畑等の土地カテゴリの被覆割合を推定する問題 (unmixing) を考えている. ディリクレ分布を被覆割合の事前分布とする空間依存性を持つベイズモデルによるunmixing手法を提案し, 実データで高性能であることを示した. さらにハイパーパラメータの自動決定法について考察する. (3) マグニチュード4-4.9の地震頻度は巨大地震の余震のため, 平常時からかけ離れた大きな値が観測されている. この影響を取り除くモデルを考察する予定である. またマグニチュード3-3.9の地震頻度は, 観測値システムの違いによると思われる構造変化がある. この影響を除いた ARX モデルを考察したい. また 時間遅れがある説明変数の次元数を理論的に評価したい.(4) 磁気嵐指数 Dst についても, ARXモデルによる予測モデルを考察する. また研究分担者は, 回帰分析や時空間現象の統計解析に貢献する研究をすすめる.
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