本年度は、昨年度のシミュレーション研究で、他の方法に比べて性能の良さが明らかになったflexible spatialscanの利点を生かし、時空間的に成長する突発的事象が検出できる新しい方法の開発を検討した。その基本的アイデアは以下の通りである。インフルエンザの感染の広がりのように、突発的事象が集積している地域が時間的に成長するモデル化の一つとして、突発的事象が広がり始める直前には、集積地域が連結した少ない地域の集合(ウインドウ)であると定義し、時間の経過にともない、ウインドウが広がる(周辺の地域を併合する)スキャン方法を構成することで現実的な時空間領域の同定を可能にするアイデアである。しかし、その併合のすべての組み合わせを考えると天文学的な数となるので、その広がり方を「単位時間には隣接地域のみ」という制限付き併合を導入した。この方法をシミュレーションで検討した結果、勃発の発生した地域が時間とともに拡大していくという状況をある程度には同定可能となった(統計関連学会連合大会で発表)。しかし、当初の研究計画で想定していた広がり方を柔軟にとらえるまでには至っていない。この問題の解決には、今後のさらなる研究が必要である。 一方で、これまでの研究成果を反映した方法を組み込んだソフトウエアの開発を行い試作システムの作成を試みた(疫学会総会で発表)。このシステムを発展させることで健康危機管理対策を推進するための有用なツールとして期待できる。
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