研究課題/領域番号 |
23300108
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研究機関 | 統計数理研究所 |
研究代表者 |
樋口 知之 統計数理研究所, 所長 (70202273)
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研究分担者 |
中野 慎也 統計数理研究所, モデリング研究系, 助教 (40378576)
長尾 大道 統計数理研究所, データ同化研究開発センター, 特任准教授 (80435833)
齋藤 正也 統計数理研究所, データ同化研究開発センター, 特任助教 (00470047)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 統計計算 / コンピュータ支援統計 / ベイズモデル / 並列計算 |
研究概要 |
アルゴリズムの開発においては、計算機環境の変化にも常に注視しておくことが大切である。近年、プロセッサのマルチコア化が劇的に進んでおり、GPGPU (General Purpose computation on Graphical Processing Units)、マルチコア等の100を超えるスケールの並列プログラミング環境もデスクトップパソコンで実現されつつある。逐次モンテカルロ法やブートストラップ、ブースティング、クラスタリング等のアルゴリズムを高並列計算向きに進化させることで、次元の呪いにより従来は困難とされている問題を超並列計算機システムでシンプルに解決することを目指している。本年度は、ブートストラップ法のGPGPU向きアルゴリズムを研究開発した。GPGPUの潜在的能力を最大限に活用し、従来のBの値を100~1万倍に可能にするとともに、ブートストラップ推定値を精度保証するアルゴリズムを構築できた。本年は、ベイズ統計にかかわる国際会議やそれにあわせたサテライト会議が開催されたので、GPGPUを利用した高効率ベイズ計算や、近年大流行しているABC(Approximate Bayesian computation)を研究している研究者と情報交換を行った。ABCは、計算機リソースを多く要するベイズ統計の中でも、際だってリソースを必要とするものである。同質の繰り返し計算の部分をうまくアクセラレータに埋め込むことが可能なら、ABCの持つポテンシャルは大きく飛躍することは明らかである。このアイデアの実現性について意見交換するとともに調査研究も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度の逐次モンテカルロ法のGPGPU向きアルゴリズムの研究開発経験をもとに、ブートストラップ法のGPGPU向きアルゴリズムを研究開発した。各ブートストラップサンプルをもとに計算する一つの手続きが通常あまりメモリーを必要としないため、PE内にその手続きを概ね収めることができる。従って、GPGPUの並列台数効果が出ることを確認した。新規アルゴリズムの開発の観点からは、ブートストラップサンプル数B に依存しないブートストラップ推定法の開発を試みた。GPGPUの潜在的能力を最大限に活用し、従来のBの値を100~1万倍にもすることができた。このことは、Bの増加に伴う推定値の収束具合をモニターしながらBの値を問題毎にコントロールことが可能であることを示す。つまり、ブートストラップ推定値を精度保証するアルゴリズムを構築できた。 実装法の研究開発と平行して、GPGPU指向の逐次モンテカルロ法の応用研究もすすめた。また本年は、ベイズ統計にかかわる国際会議やそれにあわせたサテライト会議が開催されたので、GPGPUを利用した高効率ベイズ計算や、近年大流行しているABC(Approximate Bayesian computation)を研究している研究者と情報交換を行った。
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今後の研究の推進方策 |
開発したアルゴリズムを、PCクラスタ向けに変更する作業を行う。今後、GPGPUはますますCPUの形態に近づくものと予想しているので、修正はプログラミングがより平易になる方向に展開すると楽観している。また、その計算システムを利用し、具体的なデータに対する判別問題を題材に手法の評価を行う。特に今、斎藤が取り組んでいる、銀河のスペクトルデータから銀河の形状を判別する問題に適用することを考えている。さらにこれまで開発した計算システムを一般ユーザにも利用してもらうため、GPGPU向けのプログラムを整理する。あわせて、諸オフライン的におこなっている計算サービスの中で、オンライン化により劇的に有益性が増すと考えられるビジネスモデルの調査を行う。
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