研究課題/領域番号 |
23300110
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
松野 浩嗣 山口大学, 理工学研究科, 教授 (10181744)
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研究分担者 |
FAURE Adrien 山口大学, 理工学研究科, 助教 (00610627)
葛 崎偉 山口大学, 教育学部, 教授 (30263750)
近藤 智子 (古屋 智子) 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30379979)
北風 裕教 大島商船高等専門学校, 情報工学科, 准教授 (70342558)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | システム生物学 / シグナル伝達 / シミュレーション工学 / 機械学習 |
研究概要 |
時間ペトリネットを用いたシグナル伝達経路については、昨年度までの研究でそのモデル化手法はほぼ確立したが、その手法の情報科学的な正当性が示されていなかったので、その証明を行なった。これにより、この手法の実用性を確定させることができた。また、ペトリネットによるモデル化手法を遺伝子制御ネットワークにも拡張し、最近、がん発生との関係も指摘されている概日リズム機構のモデル化とシミュレーションも行なった。 各トランジションの発火速度は、シグナル伝達経路中の分子の反応速度に対応する。アポトーシスシグナル伝達経路を対象にし、セルアレイを用い、このシグナル伝達タンパクであるカスパーゼの濃度を一定間隔で測定し、トランジションに与える発火速度の同定を試みた。この際、得られた全てのデータを使うのではなく、セルアレイから得られるタンパク質の凝集度情報も用いて、細胞周期のG1期のデータのみを使用するようにした。これにより、データの精度向上が見込まれる。得られた結果には予想通りのタイミング情報が含まれているものもあるが、想定外のタイミングを示すものもあり、データ処理方法も含め、さらなく検討が必要である。 これまでにLaser Scanning Cytometerで測定したがん細胞のタンパク質量とその凝集度のデータに対し、ニューラルネットワークのバックプロパゲーション法や自己組織化マップを用いて分類を行う手法を開発し、未分類データも高確率で認識できることを確かめてきた。しかし一方で、データサイズが増加すれば必要なニューロン数も増加させなくてはならず、この問題が認識率にも影響していた。 そこで本年度は、余分な追加学習を行なうことなく、がん細胞の自動分類を可能とするサポートベクタマシンを用いた手法を検討し、ツールを開発した。認識実験の結果、与えられたどの種類のがん細胞も正しく認識できたが、種類によっては認識率の低下が見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ペトリネットを用いたシグナル伝達経路のモデル化については、よく知られたシグナル伝達経路を対象にして既に何例も実行しており、その手法の開発は8割は達成されていると言ってよい。ただし、抑制反応の扱い方に困難な部分があり、これが残り2割の主な部分である。また、他種類の生命パスウェイへのモデル化手法の展開については、一定の成果を得ることができた。 セルアレイを用いたデータ取得は順調に行っており、実験データの生成側(古屋)と処理側(北風)の連携も軌道に乗ってきた。データ格納と処理を行なうデータベースの構築も行なっており、効率的に研究を行える環境が整った。 機械学習手法によるがん細胞の分類については、これまでのニューラルネットワークによる手法に加えて、新たにサポートベクタマシンの適用を試み、その利用可能性について一定のポジティブな知見を得ている。
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今後の研究の推進方策 |
ペトリネットによるシグナル伝達経路のモデル化については、不活性反応の取り扱い方、すなわち抑止アークを含む場合のトランジションの発火時間の決定方法が確定していない部分があるため、この解決に取り組む。昨年度から、本手法をシグナル伝達経路以外の生命パスウェイモデルに適用することに取りくんでいるが、本年度は代謝経路への適用を試みる。 セルアレイを用いたシグナル伝達のタイミング測定については、細胞周期情報の利用がまだ不十分であるため、検討を継続し、より正確なタイミングが得られるように研究を継続する。さらにサポートベクタマシン等の機械学習手法を用いた、がん細胞の分類手法の開発も継続して取り組んでいく。
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