研究実績の概要 |
シグナル伝達経路のシグナルの流れを再現するために新たに``滞留なし''という概念を導入し,滞留なしペトリネットにより反応速度の自動決定手法の開発に取り組んできた。このなかで,依存部分ネットを定義し,依存縮約による発火頻度の決定,すなわちシグナル伝達経路の反応速度の決定が可能であることを示した.これは依存縮約可能な部分ネットにおけるトランジションの発火頻度が互いに依存しあうことによる. 今年度の研究では,段階的な依存縮約によるネットの構造変化を示したうえで,滞留なしペトリネットの依存縮約を実現するアルゴリズムを提案した。さらに滞留なしペトリネットモデルにおける依存縮約可能なトランジション同士へ依存関係を定義し,依存縮約手法に関する一意性についての性質も示した。 一方,セルアレイを利用し,イメージサイトメトリーから取得したがん細胞のタンパク質量,タンパク質の凝集度,細胞のサイズ,DNA量,DNAの凝集度の5次元の散布パターンの違いを利用した特徴化の実現について,サポートベクタ―マシン(SVM)を用いて非線形空間に写像し線形分離を行うことでがん細胞の特徴化を実現することができることを示した. これにより,がん患者から採取した未知のがん細胞が,過去に採取されSVMによって特徴化されたデータベース内の細胞情報と適合させることを可能にした.この手法では,がん細胞のサンプル数が増加すればするほど学習制度を向上させることができ,患者から取得した未知のがん細胞であっても,データベース内のSVMと比較照合が可能となる. Her2タンパクを用いた10種類のがん細胞(A431, CCK-81, G-EMC-SS, HeLaS3, HMC-1-8, LK-2, MDA-MB-435, PC-3, SW-13, TIG-7)の適合実験においては,全てのがん細胞において正しく識別が可能であることを確認した.
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