研究概要 |
ミトコンドリア局在タンパク質のmRNAには、3'UTRに局在を促進するモチーフの存在が複数の研究によって示唆されている。酵母のATP2とASH1遺伝子の3'UTRには、ミトコンドリア局在を促進するヘアピン様二次構造モチーフの存在がMargeotらによって報告されている(Margeot et al.,Gene 2005)。また、Garciaらは、同じくATP2遺伝子のORF内に存在するヘアピン様二次構造モチーフが、同遺伝子のミトコンドリア局在に関与することを報告している(Garcia et al.EMBO reports,2010)。 これらのモチーフは近縁種間(S.cerevisiae,S,paradoxus,S.mikatae,S.kudriavzevii,S.bayanus)で保存されいることから、他のミトコンドリア局在遺伝子についても類似のモチーフが存在するかどうか調査を行った。従来よりも高い感度で網羅的に探索するために、ここでは配列類似性のみを手掛かりにするのではなく、新しい情報ツールを利用して、二次構造類似性を考慮した探索を行った。 UCSC Genome Browserから当該モチーフの配列アラインメントを取得し、二次構造を考慮した配列アラインメントツールであるCentroidAlignにより再アラインメントを実行した。再アラインメント結果を入力としてCentroidFoldによる共通二次構造予測を行い、二次構造注釈付き配列アラインメントを得た。これをモチーフ情報として、Infernalを用いてプロファイル確率文脈自由文法(Profile-SCFG)を構築し、これを探索パターンとして酵母ゲノム全体について類似モチーフ探索を行ったところ、MargeotらによるATP2類似モチーフが、DTR1のORF、YBR221C(MLR局在遺伝子)の3'UTR領域、Q0140のORF、SEC4(MLR局在遺伝子)の5'上流、YMR171C(MLR局在遺伝子)のORF中に見つかり、ASH1類似モチーフが、ADH7のORF、CTK3のORFに検出された、さらに、GarciaらによるATP2 ORF内の類似モチーフがLTE1のORF、CDC10の3'UTR、SOP4(MLR局在遺伝子)、YJL073W、TRK2、YLR036C、CDC5、GAC1、NIF7のORFにそれぞれ検出された。
|