研究課題/領域番号 |
23300114
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
能瀬 聡直 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 教授 (30260037)
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キーワード | 神経可塑性 / ショウジョウバエ / 運動回路 / 臨界期 / 運動感覚フィードバック / 神経回路 |
研究概要 |
神経回路が成熟する過程には、環境からの刺激または自発的な発火活動に応じて神経間の接続を再構成する時期があり、この可塑的な現象は神経間の形態的かつ機能的な変化を伴いながら活動依存的に組織化されると考えられている。これまでに、視覚などの感覚系の発達過程において、このような神経活動依存的な神経回路の編成が良く研究されており、特に臨界期の存在が明らかにされている。しかし、運動系の発達過程における感覚入力の役割及びその長期的な影響についての細胞・分子機構はほとんど明らかにされていない。そこで、本研究では、ショウジョウバエ胚・幼虫をモデルとして用い、運動回路の発達過程における感覚受容、特に運動の結果として生じる体制感覚、の役割を調べることを目的とした。ショウジョウバエの感覚神経細胞は三種類に分けられるが、その中でも運動感覚フィードバックへの関与が示唆されているchordotonal neurons(chos)およびmultidendritic neurons(md)に着目した。以前の研究により、胚発生後期に運動パターンの著しい変化が見られることが分かっており、回路が最も可塑性の高い時期であると考えられる。そこで、温度感受性Shibireを用いてこの時期特異的に(具体的には胚最後期6時間)において、chosおよびmdの神経伝達を阻害し、成長後の幼虫の運動パターンへの影響を調べた。その結果、chosの機能を阻害したときにのみ、対照個体と比べてぜん動運動が有意に遅くなることが分かった。このことは、特定の感覚神経細胞による運動の感覚フィードバックが運動回路の適切な発達に重要であることを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、感覚神経細胞の活動阻害により、運動回路の発達過程への運動感覚フィードバックの関与を示すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
今回胚後期6時間における感覚入力が運動回路の発達に重要であることを示した。今後、さらに細かく時間を区切り、特に重要な時期、すなわち臨界期の存在を探る。当初の計画と大きな変更はない。
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