研究課題/領域番号 |
23300116
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
小松 由紀夫 名古屋大学, 環境医学研究所, 教授 (90135343)
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キーワード | 神経科学 / 脳・神経 / シナプス可塑性 / 視覚野 / 一酸化窒素 / 経験依存的機能成熟 |
研究概要 |
ラット視覚野スライス標本を用いてNOによるT型Ca^<2+>チャネル依存性長期増強(T-LTP)誘発の抑制機構を解析した。4層の刺激により誘発される細胞外電位を2/3層から記録し、2Hz刺激を15分間与えてT-LTPを誘発した。灌流液にNO発生剤のアルギニンあるいはNOR3を加えるとT-LTPの誘発は完全に抑えられた。この抑制作用は、NO合成阻害薬L-NAMEあるいはnNOS選択的NO合成阻害薬N-propyl-L-arginineにより抑えられた。また、アルギニンによるT-LTPの抑制は、NOスカベンジャーのPTIO、あるいは、NO感受性guanylyl cyclase抑制剤により抑えられた。cGMPアナログのpCPT-cGMPはアルギニンと同様にT-LTPの誘発を阻止した。nNOSが一部のGABA作動性細胞にのみ発現していることを考慮すると、以上の結果は、nNOS細胞由来のNOがguanylyl cyclaseとcGMPを介してT-LTP誘発を抑制すると結論できる。 nNOS-ChR2/GFPマウスから作製した視覚野スライス標本において、青色光照射によりnNOS細胞に活動電位が発生することが判明した。この結果、このマウスにおいて光照射によりnNOS細胞の活動を制御することにより、nNOS細胞がT-LTPや視覚反応の可塑的変化の制御に果たす役割を解析できることが分かった。また、灌流液にsubstance P(SP、250 nM)を加えるとnNOS細胞に選択的に持続的な活動電位が発生することが分かったので、SP投与によりnNOS細胞による可塑性の制御についても解析できる。 nNOS細胞の活動に伴うNO産生特性をNO蛍光インディケーターのDAF-FMやDAF-2を用いて調べたところ、この方法はnNOS細胞からNOの細胞外への広がりを検出するのに必要な感度が無いことが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
この研究に重要であるnNOS-ChR2/GFPマウスが実験に利用出来ることが判明したことは、この研究課題の達成に向けた大きな前進であった。また、NOによるT-LTPの誘発の機構の解明が期待したレベルにまでほぼ到達した。
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今後の研究の推進方策 |
今後、nNOS-ChR2/GFPマウスを用いた研究を中心に進め、スライスでのT-LTPの制御機構とin vivoでの視覚反応の可塑性の制御機構を重点的に調べる。nNOS細胞の活動に伴うNO産生特性をNO蛍光インディケーターのDAF-FMやDAF-2を用いて調べたが、NO検出感度が十分でなく、その細胞外への広がりを解析することは困難であった。今後、高い検出感度を持つ、一酸化窒素測定システムinNO-Tを導入して、この問題を再度検討する。
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