研究課題/領域番号 |
23300116
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
小松 由紀夫 名古屋大学, 環境医学研究所, 教授 (90135343)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 神経科学 / 脳・神経 / シナプス可塑性 / 視覚野 / 一酸化窒素 / 経験依存的機能成熟 |
研究概要 |
ラット視覚野スライス標本を用いてNOによるT型Caチャネル依存性長期増強(T-LTP)誘発の抑制機構を解析した。4層の刺激により誘発される細胞外電位を2/3層から記録し、2Hz刺激を15分間与えてT-LTPを誘発した。昨年度の研究により灌流液にNO発生剤を加えるとTCa-LTPの誘発が抑えられる結果を得た。本年度の研究では、アルギニンによるT-LTP抑制の濃度依存性を解析した結果、0.2 mMでほぼ完全に抑えることが分かった。また、nNOS-ChR2/GFPマウスから作製した視覚野スライス標本を用いた実験で、2Hz刺激の間、青色光照射してnNOS細胞を活性化すると、T-LTPの誘発が抑えられることも分かった。 昨年度の研究で、灌流液にsubstance P(SP、250 nM)を加えるとnNOS細胞に選択的に持続的な活動電位が発生することが分かったので、SP投与がT-LTPの誘発を抑制するかを検討した。その結果、SPはT-LTPの誘発を抑制することが判明した。 NOによるT-LTP誘発の抑制が、T型Caチャネル電流の抑制によるか検討した。T-LTP誘発を促進するNOS阻害薬のL-NAMEを投与してもT型Caチャネル電流にほとんど変化が見られなかったので、その可能性は低いと考えられる。 nNOS細胞の活動に伴うNO産生特性をNO蛍光インディケーターのDAF-FMやDAF-2を用いて昨年度調べたが、感度が十分でなくNOの細胞外への広がりを解析することはできなかった。この問題を、高い検出感度を持つ、一酸化窒素測定システムinNO-Tを導入して検討した。しかし、利用出来るセンサーが大きすぎ、スライス標本での測定は困難であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
スライスの実験により、nNOS細胞の活動により生じたNOがT-LTPを阻害することと、その抑制の分子機構がかなりのレベルにまで解析できた。この結果を利用することにより、nNOS細胞の活動による視覚反応の可塑性の制御機構の解析が可能となり、この研究課題の達成に向けて前進できた。
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今後の研究の推進方策 |
今後、NO産生の薬理的な制御とnNOS-ChR2/GFPマウスを用いた光による制御の2つの方法を併用して、T-LTPの視覚反応可塑性に果たす役割と、nNOS細胞による視覚反応の経験依存的発達の制御機構を麻酔下のラット、マウスから視覚反応を記録して解析する。nNOS細胞の活動に伴うNO産生特性を明らかにすることは、この研究において重要であるが、これまで成功していない。一酸化窒素測定システムinNO-TのNOセンサーはスライス標本に適用するには大き過ぎるので、in vivoでの測定を試みる。また、より小型なセンサーを特注で作り、スライスでの測定を再度試みる。
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