研究課題/領域番号 |
23300117
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
西 英一郎 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (30362528)
|
研究分担者 |
大野 美紀子 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10583198)
平岡 義範 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60397552)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | 細胞外ドメインシェディング / 髄鞘形成 / アルツハイマー病 / 多発性硬化症 / 徐脈 / 交感神経 |
研究概要 |
我々はnardilysin (NRDc)が膜タンパク質細胞外ドメインシェディングの活性化因子であることを明らかにしてきた。NRDc 欠損マウス、前脳特異的NRDc強発現マウス(NRDc-Tg)の解析から、NRDc が中枢・末梢神経の軸索成熟と髄鞘形成を制御していることを明らかにし、その分子機構としてNRDc がBACE1 によるNRG1 シェディングを制御することを示した。一方NRDc欠損マウスは、明らかな低血圧・徐脈を呈した。以上からNRDc が、髄鞘形成の関わる病態や交感神経調節系において重要な役割を果たすことが示唆された。本申請においては、1)NRDc によるBACE1 活性制御の分子機構解明、2)多発性硬化症、神経再生におけるNRDc の意義、3)循環動態調節におけるNRDc の意義の解明、を目的とした。 目的1: 当該年度には新たにアルツハイマー病モデルマウスを用いて、NRDcがin vivoでBACE1活性(アミロイド前駆体タンパク質APP切断における)に及ぼす影響を検討するため、同モデルマウスとNRDc-Tgを交配しアミロイド班の数や面積の検討を行っている。 目的2: Cuprizone投与による脱髄の程度を、野生型、NRDc-Tgを用いて比較検討したところ、NRDc-Tgにおいてより強い脱髄を認めた。一方Cuprizone投与中止後の再髄鞘化は、NRDc-Tgで明らかに増強していた。 目的3:野生型、ホモ変異体マウスの心臓を用いて、交感神経終末のマーカーの免疫染色を行ったところ、野生型は外膜側により多くの交感神経支配を認めたが、ホモ変異体マウスでは、外膜側と内膜側の神経密度に明らかな差は認めず、均一な交感神経支配を受けていた。徐脈の原因を明らかにするため、引き続き内因性心拍数、血中カテコラミン濃度、心筋におけるイオンチャンネル発現などの解析を続けている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目的1では、NRG1シェディングのみならず、BACE1のβセクレターゼ活性(APP切断)にNRDc発現が及ぼす効果の検討まで進んでいる。アルツハイマー病モデルマウスの主な検討は生後1年後に行うため、研究期間内に完全な解析が終了できるかどうかは不明だが、少なくともプレリミナリーな結果は得られると考えている。目的2の神経再生については、動物モデル構築に遅れが生じているが、多発性硬化症モデルを用いた結果は順調に得られている。目的3については、心拍数、血圧など循環動態の解析は、テレメトリーを用いた解析を含め、順調に進んでいる。さらに初代培養心筋細胞などを用いた、分子機構の解明についても興味深い結果が得られており、今後は同分子機構に則って、in vivoの表現型がレスキューできるかどうかを検証していく。
|
今後の研究の推進方策 |
目的3において、心筋特異的(αMHC プロモーター)NRDc 強発現マウス(αMHC-NRDc-Tg)の作製、および同マウスと、NRDc-/-マウスの交配による、心臓特異的トランスジェニックレスキューを予定していた。αMHC-NRDc-Tgを作製し、心筋における過剰発現には成功したが、NRDc-/-マウスと交配した場合、充分な心筋NRDc発現が得られないことが明らかになった。原因は究明中だが、同手法を用いることは困難と考えられた。一方、組織特異的ノックアウトマウスの作製に必要なNRDc floxedマウスの作製に成功したため、今年度は心筋特異的Cre発現マウス、交感神経特異的Cre発現マウスとの交配により、それぞれ組織特異的NRDc欠損マウスの作製を行い、循環動態の解析を行う。これにより、循環動態制御におけるNRDcの臓器特異的機能が明らかにできると考える。
|