研究課題/領域番号 |
23300118
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
山本 亘彦 大阪大学, 生命機能研究科, 教授 (00191429)
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研究分担者 |
菅生 紀之 大阪大学, 生命機能研究科, 助教 (20372625)
北田 一博 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (70263093)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 軸索分岐 / シナプス / 視床 / 大脳 / 神経活動依存性 |
研究概要 |
発達期に神経回路は感覚入力などに依存する神経活動により修飾されることが知られているが、その分子機構については不明な点が多い。この問題を解明するために、視床から大脳皮質への投射は適した系である。昨年度までに、視床皮質軸索の分岐形成に関して、発達初期においてはSema7Aが神経活動非依存的に、発達後期にはNetrin-4が神経活動依存的に促進的に作用を示すことを明らかにした。本年度は、分岐形成に対するシナプスの役割ならびに神経活動依存的にNetrin-4が発現するための調節領域の解析を行った。前者については、視床-大脳皮質共培養を用いて、シナプトフィジン-GFPとDSREDの遺伝子を視床ニューロンに導入し、シナプスと分岐の関係性を調べた。その結果、シナプトフィジンpunctaが皮質切片内で層特異的に形成され、その分布は軸索分岐点の分布と相関性がみられた。さらに、大半の軸索分岐点上にはpunctaが局在しており、シナプスと軸索分岐点は互いに近傍に位置することが示唆された。さらにタイムラプス観察によって、新たに形成された分枝の多くがpunctaの位置から出現しており、軸索分枝形成がシナプスによって制御される可能性が示唆された。加えて、シナプス末端からの栄養因子の取り込みによって分岐が形成される仮説を掲げ、エンドサイトーシスの役割について解析を行った。そのため、遺伝子導入法を用いてエンドサイトーシス阻害タンパク質を視床ニューロンで強制発現させたところ、その濃度に応じて分岐形成が抑制されることが示された。このことはプレシナプスからの物質取り込みも重要な要素であることを示唆している。また、後者については、ルシフェラーゼによる解析方法を確立し、netrin-4の上流域が発達に伴ってその発現を増加させるのに貢献していることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究により、軸索分岐とシナプス形成との関連性について、視床軸索と皮質細胞の接点であるシナプス部位がその拠点になることが示された(松本直之ら、日本神経科学学会発表)。この結果は、本年度論文に発表した視床軸索から大脳皮質細胞への作用との関連からも重要である。すなわち、Neuritin-1やVGFによる順行性シグナルが一旦受け手側の皮質細胞を活性化することとも関連し (Sato et al., The Journal of Neuroscience, 2012)、シナプスの分岐形成に果す役割は、生理学的かつ分子機構の研究への新展開になることが期待できる。これに加えて、Netrin-4の発現調節機構へのアッセイ系を確立することができ、皮質細胞側での軸索分岐促進因子の発現調節に対しての第一歩になった。
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今後の研究の推進方策 |
1. シナプス形成が分岐形成に及ぼす分子機構解明のため、シナプスに蓄積する分子の中で候補分子を選択し、分岐形成の有無を検索する。特に、シナプスでのエンドサイトーシスの分子機構や、シナプス形成に関わる接着分子が軸索分岐に作用する可能性を調べるため、これらの過剰発現実験やドミナントネガティブ体導入あるいはiRNA法による抑制実験を行う。 2. 神経活動依存的なnetrin-4の遺伝子発現を定量的あるいは経時的に調べるために、netrin-4の上流域にルシフェラーゼ遺伝子を導入したトランスジェニックマウスの作製を行い、それを用いて神経活動依存性の解析を行う。特に、このトランスジェニックマウスから取り出した大脳切片に対して、様々な電気刺激を加えたときのルシフェラーゼの発光強度変化を定量的に解析することによって、大脳皮質ニューロンの神経活動が及ぼすnetrin-4発現の制御機構を明らかにする。発火活動-netrin-4発現-軸索分枝の3者の関係性長期的・短期的なタイムラプス観察によって明らかにする。
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