研究概要 |
これまでに、視床皮質軸索の分岐形成に関して、神経活動が促進的に作用することを明らかにし(Uesaka et al., 2005, 2007; Yamada et al., 2010)、本研究ではその細胞分子機構を明らかにすることを挙げた。その一つとして、昨年度までにシナプス形成との関連性を調べ、培養下の視床皮質投射系において視床軸索の分岐の多くが前シナプスから出現することを見出した。最終年度として本年度は、神経活動依存的な分岐形成とシナプス形成との関連性を明らかにすることを目的として、視床-大脳皮質共培養を用いて視床軸索の神経活動度を変化させることによってその軸索分岐を調べた。そのために視床ニューロンにシナプトフィジン(SYP)-GFPとDS-REDに加えて、神経活動を減少させるために内向き整流性カリウムチャネル(Kir2.1)を発現させ、上昇させるためにはバクテリア由来のナトリウムチャネル(NaChBac)を発現させた。その結果、軸索分岐はKir2.1により著しく減少し、逆にNaChBacにより有意に増大した。一方、シナプス形成に関しては、Kir2.1によってSYP+パンクタの数は減少したが、NaChBacによってはコントロールと大差なかった。さらに、タイムラプス観察によって、コントロールでは新たに形成された分枝の多くがSYP+パンクタの位置から出現したのに対して、NaChBacを発現した軸索ではSYP+パンクタ以外の場所から枝が出現する割合の方が多くなった。以上のことから、神経活動に依存して軸索分岐のモードが変化することが示唆された。
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