研究課題
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、上位及び下位運動ニューロンの選択的変性を特徴とする神経変性疾患である。本研究は、ALSの重要な発症要因の中から、酸化ストレス、タンパク質分解異常、及び細胞内物質移送異常に焦点を絞り、遺伝子改変マウスを駆使することにより、生体レベルでの複数の疾患発症要因の相互連関を明らかにし、最終的にALS発症の包括的分子機構の解明を目指すものである。本研究では、p62欠損ALSマウスモデルの運動機能等の表現型を行動学的に解析するとともに、脊髄を中心とした中枢神経系の生化学的・免疫組織学的手法による解析を行った。その結果、p62の機能喪失により、変異SOD1発現型のALSマウスモデルにおける疾患症状が顕著に悪化することを見出した。特に、超微形態的解析により、p62欠損ALSマウスモデルの脊髄において、軸索の変性及び軸索内へのオートファゴソーム様の膜小胞の異常蓄積が顕著であることが明らかにされた。次に、酸化ストレス関連因子であるNrf2とALS発症との関連を明らかにするため、Nrf2欠損ALSマウスモデルを作出し、それらのマウスの運動機能等の表現型を解析した。その結果、Nrf2の全身での欠損は、少なくとも変異SOD1発現ALSマウスモデルにおける疾患症状に影響しないことが判明した。従って、酸化ストレス因子であるNrf2はALS の発症に強く関与していない可能性が示唆された。一方、変異SOD1発現ALSマウスモデルとALS2欠損及びp62欠損マウスを交配することによりALS2/p62ダブル欠損ALSモデルを作出した結果、当該マウスはいずれの単独欠損ALSモデルマウスより更に早期に発症することが判明した。従って、ALS2とp62の機能喪失は、運動ニューロン疾患発症に相乗的に作用することが明らかとなった。今後具体的な分子連関を解明する必要があると考えられる。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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Neurobiol. Aging
巻: 35 ページ: 726.e7-726.e9
10.1016/j.neurobiolaging.2013.09.008