研究課題
Rab35は、複数の系で神経突起伸展に関与することが最近報告されている。そこで、Rab35の神経突起伸展に果たす役割とその活性制御機構を明らかにするために、Rab35のFRETセンサーの開発を行なった。Rabファミリータンパク質のFRETセンサーの基本構造をもとにして、50種類以上の候補を作製した結果、Rab35に対する高性能のFRETセンサー(Raichu-AO18)を得ることができた。そのダイナミックレンジは47.5%であり、Gタンパク質のセンサーとしてはかなり高感度である。また、Rab35に対するGAPとの同時導入により、量依存的にRaichu-AO18のFRET効率が低下することから、このセンサーが細胞内でのGEF/GAP活性のバランスをモニターする能力を持っていることが確認できた。神経細胞株であるNIE-115細胞にRab35センサーを発現させて、血清を抜いて突起伸展を誘導し、神経突起におけるRab35の活性分布を検討した。Rab35センサーは細胞膜、細胞質、小胞に存在する。興味深いのは、小胞の間でRab35の活性の高低が見られることである。次に、細胞膜でのRab35の活性を検討するために、Raichu-AO18のC末端をK-RasのC末端に置換したRaichu-AO18kxを作製した。Raichu-AO18Rxを発現させたPC12細胞をNGFで刺激してタイムラプス画像を撮影した。NGFを加えるとまず細胞全体でゆるやかにRab35活性が上昇し、その後は高い活性を保ち続ける。また、形態変化に伴い突出部が特に高い活性を示すことがわかった。Rab35以外に神経突起伸展への関与が予想される2種類のRabファミリーのメンバーについてFRETセンサーの作製を試み、そのうち1種について有望な候補を得ているので、平成23年度以降もその開発を進める。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画では、平成22年度中に神経突起伸展への関与が予想される3種類のRabファミリーのメンバーについてFRETセンサーを作製する予定だったが、候補を含めて2種類を作製できた。また、そのうちのひとつについては、予定を早めて細胞レベルでの詳細な解析を行ない、いくつかの重要な結果を得ることができた。
ほぼ当初計画どおりに神経突起伸展への関与が予想されるRabファミリーメンバーのFRETセンサーの作製が進んでいるので、それを継続するとともに、平成22年度にあまり進展させることができなかったNCAMリガンドによるPC12細胞の突起伸展についての解析により力を入れる。またデュアルFRET法の開発に着手する。
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