研究課題
TC10について、以下の結果などから「TC10上のGTP加水分解はExo70の乖離を介してRab11およびL1陽性小胞の膜融合を促進し、神経突起伸展を正に制御する」と結論した。①NGF刺激で伸展しているPC12細胞の突起先端部、海馬神経細胞の成長円錐などに共通して、伸展部に限局した細胞膜でのTC10活性の低下が見られた。また、小胞でのTC10活性は細胞膜での活性よりも高かった。②TC10のノックダウンによりPC12細胞でのNGF刺激による神経突起伸展は20%程度に抑制され、この抑制は恒常活性化型のTC10を発現させてもレスキューできなかった。③神経細胞株の成長円錐にはTC10陽性小胞が存在し、膜融合する。④神経細胞株の成長円錐において、TC10陽性小胞はかなりの割合で、Rab11および細胞接着因子L1を含む。多様な細胞で膜リサイクリング経路への関与が示されているRab35は、複数の系で神経突起伸展に関与することが最近報告された。研究代表者はRab35のセンサーを作製し、以下のような新知見を得た。①神経突起突出部の細胞膜でRab35が活性化すること、②神経突起の成長円錐とshaftに存在するRab35陽性小胞の大部分にはRab11が共局在することなどである。Rab35のGAPとしてEPI64A-Cが知られているが、EPI64CがRasGAP活性も持つことが報告された。EPI64AとEPI64Bは、どちらも広範囲の組織で発現している。独立した3つの方法でEPI64サブファミリーの3つのメンバーについてRasGAP活性を検討した結果、H-/N-/K-Rasについて、3つのメンバー全てがin vivoでGAP活性を示すことがわかった。COS7細胞では、EPI64AとEPI64Bは細胞周辺部に限局して存在し、COS7細胞でのH-Ras活性は、ゴルジ体で細胞膜よりも高いことがわかった。
2: おおむね順調に進展している
研究課題の柱になるいくつかのテーマについて順調に結果が得られ、特に細胞骨格制御と膜制御のハブとしてRac1-TC10経路を見出したのは大きな成果である。Rab35をはじめ、いくつかのシグナル分子の新規センサーの開発も進んでおり、おおむね当初の計画どおり進んでいる。
今後は、ノックアウトマウスなどを作出して、これまでの成果を個体レベルで検討するとともに、定量データの統計解析を進め、細胞骨格の動的編成に基づいた神経細胞の形態変化シグナル制御の基本モデルの作製を目指す。
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10.1093/jb/mvs147
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