研究課題/領域番号 |
23300137
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
古市 貞一 東京理科大学, 理工学部, 教授 (50219094)
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キーワード | CAPS2 / Cadps2 / BDNF / Arf4/5 / 有芯小胞 / ゴルジ体 / 自閉症 / 発達障害 |
研究概要 |
CAPS2がArf4/5低分子量GTPaseと相互作用しArf4/5をゴルジ体膜に会合させること、両者の相互作用部位に変異を入れるとトランスゴルジ網の形態が変化し有芯小胞マーカータンパク質のクロモグラニンAの細胞突起への分布が減少すること、などを明らかにした。この結果から、CAPS2はArf4/5をゴルジ体にリクルートすることで、有芯小胞の形成に関係することが示唆される。 一部の自閉症患者から見出した本来稀な選択的スプライシング亜型CAPS2-dex3の異常増加について、その生物学的な意義を調べるために、CAPS2-dex3を発現するマウスモデルを開発した。CAPS2-dex3は、エクソン3を欠失した亜型であり、初代培養ニューロンに発現すると軸索での分布が特異的に著減する。CAPS2-dex3マウスにおいてもニューロンの軸索投射部位での免疫反応の低下し、軸索からのBDNF分泌が減少することが個体レベルで証明された。また、CAPS2-dex3マウスは、社会行動の減少、特定の新奇環境下での不安の亢進、母性養育行動の減少、日内リズムの欠損などを示した。これらの結果から、CAPS2は細胞局所におけるBDNF分泌の増強に重要な役割を持つこと、また、CAPS2がエクソン3を欠失すると軸索部でのBDNFの分泌促進がなくなり、おそらく神経回路の障害を引き起こして、社会行動などの行動障害をきたす可能性が示唆される。 自閉症患者ゲノム解析で、CAPS2のコピー数多型が複数例報告されている。そこで、CAPS2のヘテロマウスが1コピーのCAPS2遺伝子を持つモデルとして行動解析したところ、不安の増加は見られたが社会行動に有意な障害は見られなかった。自閉症は多因子疾患と考えられることから、CAPS2遺伝子が1コピーだけでは発症には至らず、他の変異との組合せが発症リスクを高めるのではないかと予測される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度は、CAPSファミリータンパク質がどのようにして有芯小胞の形成に関わるのか、その分子メカニズム解明の一端となる低分子量GTPaseの一員のArf4/Arf5にとの相互作用を明らかにできた。また、自閉症型CAPS2-dex3のモデルマウスの作製に成功し、CAPS2-dex3が確かに軸索での分布が著減することを動物個体レベルで実証することができ、さらにこのマウスが期待通りに社会行動をはじめとする自閉症を特徴づける行動障害を発症することを明らかにすることができた。後者の業績はプレス発表を行った。以上のことより、当初の目標を計画以上に達成した。
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今後の研究の推進方策 |
CAPS1コンディショナルKOマウスの開発とその表現型を解析をする。 CAPS2-dex3マウスの小脳における分泌や表現型について解析をする。 CAPS2によるBDNFの分泌動態の制御をイメージング解析する。 CAPS2によるカテコールアミンの分泌動態をイメージング解析する。
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