研究課題/領域番号 |
23300138
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研究機関 | 財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
行方 和彦 財団法人東京都医学総合研究所, 運動・感覚システム研究分野, 主席研究員 (70392355)
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キーワード | Dock3 / 軸索再生 / アクチン骨格 / GEF / 微小管 |
研究概要 |
Dock3はアルツハイマー病の原因遺伝子産物であるプレセニリンに結合する新規タンパク質として発見された。その後の解析から、Dock3はRac1を活性化するグアニンヌクレオチドであり、アクチン骨格の重合を制御して軸索伸長に影響を与えていることが明らかとなった。軸索の伸長に深く関わる細胞骨格として、アクチン骨格の他にチューブリン分子によって構成される微小管が知られている。アクチン骨格は成長円錐の細胞膜近傍で機能するが、微小管は神経軸索内部で束化した状態で存在しており、その重合状態が軸索の伸長に影響を与える。微小管の重合・脱重合のバランスはチューブリンに結合するタンパク質(タウタンパクやCollapsin Response Mediator Protein-2(CRMP-2)など)によって調節されている。一方セリン/スレオニンキナーゼであるグリコーゲン合成酵素キナーゼ-3β(glycogen synthase kinase-3β)はCRMP-2のリン酸化を介して神経極性を制御することから、軸索伸長メカニズムへの関与が推定された。本研究の結果からGSK-3βはDock3と細胞膜上で複合体を形成し、同じセリン/スレオニンキナーゼであるAktによってSer9部位がリン酸化され、不活化されることが新たに明らかとなった。このDock3を介したGSK-3βの不活性化はCRMP-2に加えてadenomatous polyposis coli(APC)の活性化を誘導しており、微小管の重合促進による軸索伸長効果を示した。Dock3によるアクチン細胞骨格の重合にはGEF活性が必要であったが、GSK-3βを介した微小管重合においてはGEF活性が関与しないことも判明した。以上からDock3はGEF活性非依存的な経路によっても細胞骨格の制御が可能であることが推測される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の成果が国際科学雑誌であるJournal of Neuroscienceに掲載されたため。
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今後の研究の推進方策 |
今後も当初の予定通りに研究を遂行する。 特に動物モデルを使用した多発性硬化症の治療研究について十分な成果を早期に得られるように努める。
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