研究課題
生活に必要な時間知覚や運動タイミングの制御には、大脳基底核と小脳が重要である。本研究では、大脳-基底核ループや大脳-小脳連関によって重層的に処理されると考えられている時間情報を具体的な行動や神経活動としてとらえるとともに、これらのパラメータ調節に基底核や小脳で知られている特徴的な局所回路がどう関与しているのか、線条体や小脳核などへの薬物投与による行動への影響を調べることで明らかにする。3年目にあたる平成25年度には、線条体への薬物投与による影響を重点的に調べた。手がかり刺激の後、一定の時間が経過した後に自発的に眼球運動をするようにサルを訓練し、運動タイミングによって、時間経過をモニターする神経機構を調べた。これまでの研究で、線条体から時間経過とともに増大する活動が記録されており、また、その上昇率が再現時間によって異なることを見出している。これらの記録部位にドーパミンあるいはアセチルコリン受容体へのリガンドを微量注入し、神経モジュレータの計時における役割を探った。2頭のサルで様々な薬物の効果を調べたところ、ドーパミンD2受容体拮抗薬で再現時間が短縮すること、ニコチン性アセチルコリン受容体でも同様の効果があること、ニコチンの投与では逆に反応時間が延長することを見出した。
2: おおむね順調に進展している
おおむね順調に研究が進展している。計画書に挙げた2つの実験課題のうち、上述の時間再現課題に関しては、すでに興味深いデータが得られている。他方の欠落オドボール課題については、少しずつ新たなデータが集まりつつあるが、やや研究が遅れている。小脳からの記録および刺激実験を進めている。
時間再現課題に関しては、薬理実験のデータが9割方集まり、論文作成に着手しており、H26年度前半に投稿する予定である。昨年度報告した神経活動については、2頭目からのデータ収集に時間がかかっているが、最終年度前半までに終了したいと考えている。オドボール課題に関しては、小脳核での記録・刺激実験を続けるとともに、イオン泳動法を利用した薬物投与に挑戦すること検討している。
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