時間知覚や運動タイミングの制御には、大脳基底核と小脳が重要である。本研究では、大脳-基底核ループや大脳-小脳連関によって処理されると考えられている時間情報を具体的な行動や神経活動としてとらえるとともに、これらのパラメータ調節に基底核や小脳で知られている特徴的な局所回路がどう関与しているのか、線条体や小脳核への薬物投与による行動への影響を調べることで明らかにすることを試みた。 最終年度にあたる平成26年度は、これまでの研究成果をまとめるとともに、不足していたデータ収集を重点的におこなった。手がかり刺激の後、一定の時間が経過した後に自発的に眼球運動をするようにサルを訓練し、運動タイミングによって、時間経過をモニターする神経機構を調べた。線条体から時間経過とともに増大する活動が記録されており、また、その上昇率が再現時間によって異なることを見出している。小脳歯状核では、再現時間に関係なく、運動に約500ミリ秒先行して上昇する神経活動が記録されており、これらの定量解析を進めて論文を執筆している。また、線条体の記録部位にドーパミンあるいはアセチルコリン受容体へのリガンドを微量注入し、神経モジュレータの計時における役割を探ったところ、ドーパミンおよびニコチン性アセチルコリン受容体の拮抗薬で再現時間が短縮すること、ムスカリン性受容体のリガンドでは反応時間に変化が無いことを見出しており、こちらに関しては論文投稿準備中である。なお、これらの研究成果についてはすでに学会発表を行っている。
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