研究課題
拡張型心筋症患者(DCM)は、うっ血性心不全(CHF)を発症後に死亡するケースから心不全を発症せず突然死するケースまで様々な疾患表現型を示すことが知られている。このことは、環境要因か遺伝的要因あるいは両者がその疾患表現型を修飾している可能性を示唆している。本研究では、単一遺伝子病であるヒトの遺伝性DCMの疾患表現型を修飾する未知の遺伝的要因の探索を試みた。心筋トロポニンTをコードしている内在遺伝子にDCMを引き起こす突然変異を導入したノックインマウスをBALB/cとC57Bl/6の遺伝的背景上に作製した。BALB/c 背景DCMマウスは心拡大と収縮機能不全を示し、重篤なCHFを発症したのち死亡するが、C57Bl/6背景DCMマウスは心拡大と収縮機能不全を示すにもかかわらず、心不全を発症することなく突然死することが明らかになった。BALB/cマウスは、トリプトファン脱水酵素2(TPH2)遺伝子における一塩基多型によって脳セロトニン機能障害を持っており、そのためうつ病と不安障害関連行動を示すことが知られている。うつ病は、心不全患者によく見られ予後の悪化への関連が示されていることから、抗うつ薬パロキセチンと抗不安薬ブスピロンの治療効果をこれらのマウスを用いて検討した。どちらの薬も、BALB/c背景DCMマウスの心拡大を減少させ収縮機能不全と重篤なCHF症状を改善したことから、脳セロトニン機能障害に関わる遺伝的要因がDCMにおけるCHF発症に重要な役割を果たしていることが示唆された。本研究ではさらに、心不全発症における脳セロトニン機能障害の関与を証明するため、BALB/cとC57Bl/6系統間でTPH2遺伝子のみを入れ替えたDCMノックインマウスの作製をスピードコンジェニック法によって行い、ほぼ完了することができた。今後それらの疾患表現型の解析を行っていく予定である。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (3件)
Cardiovascular Research
巻: 99 ページ: 65-73
10.1093/cvr/cvt071
Journal of Molecular and Cellular Cardiology
巻: 63 ページ: 69-78
10.1016/j.bbr.2011.03.03
Journal of Geriatric Cardiology
巻: 10 ページ: 91-101
10.3969/j.issn.1671-5411.2013.01.014