研究課題/領域番号 |
23300146
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
福田 紀男 東京慈恵会医科大学, 医学部, 准教授 (30301534)
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研究分担者 |
照井 貴子 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (10366247)
小比類巻 生 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (40548905)
大山 廣太郎 早稲田大学, 理工学術院, 助教 (70632131)
大槻 磐男 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (70009992)
栗原 敏 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (90057026)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 筋肉生理学 / 分子・細胞生理学 / 分子心臓学 / 1分子イメージング・ナノ計測 / ナノバイオシステム / 医用物理学 / 生物物理一般 |
研究概要 |
In vivoにおける心筋興奮収縮連関のイメージングを実現するため、細胞、個体の両面から研究を行った。 (I)幼若心筋細胞を用いた実験:ラットの幼若心筋細胞のZ線にAcGFPを発現させ、サルコメアの動態解析を行った。サルコメア長の測定精度は3 nmであった(50 fps)。これらの細胞をCaイオノフォアにて処理し、さらにCaポンプ機能を阻害した上で低濃度のCa溶液に暴露すると、サルコメアの鋸波状の自励振動(Cell-SPOC)が観察された。次に、様々な頻度で細胞に電気刺激を加え、波形解析を試みた。刺激頻度を生理的なレベル(3~5 Hz)に上げると、伸展速度が上昇し、波形がCell-SPOCに類似した。 (II)In vivoマウス実験:In vivoマウス心臓において、単一サルコメアの動きを共焦点下に観察した(カメラ速度:100 fps)。すなわち、α-actinin-AcGFP発現組み換えアデノウイルスベクター(ADV)を作製し、これを麻酔・開胸したマウスの心臓に投与した。ADV投与2~3日後に心臓を摘出し、表面から共焦点観察を行った。静止時のサルコメア長は~2.0 μmであった。単一サルコメアの長さの測定精度は10 nmである。マウスを人工呼吸下、開胸してサルコメア長を計測すると、短縮相、拡張相において平均で~1.7 μm、~2.0 μmという値が得られた。心臓拍動にともなうZ軸方向の動きは、対物レンズにピエゾを設置することによって克服した。さらに、マウスから摘出した心臓をCa感受性色素であるFluo-8にて灌流し、心臓表面からの観察によって心筋細胞内Ca動態(Caウエーブ)を高精度で捉えることに成功した。Caウエーブは各細胞でランダムに生じているが、電気刺激の負荷によって同調し、 一つの大きなCaトランジェントが生み出されることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究における申請者らの具体的な目標は、mmレベルの動きをともなう小動物個体の心臓から心筋細胞内局所の生体分子の挙動やイオン動態をnm精度で抽出できる顕微システムを新たに開発し、これを基盤として生体分子の集団がどのようにして心臓拍動のリズム調節機構を生み出すかを明らかにすることである。また、各心臓病のモデル動物を使い、心筋細胞ナノ領域における生体分子の挙動やイオンの動態がどのように変化して心拍のリズム破綻につながるかを明らかにする。H24年度、申請者らは、幼若心筋細胞を用いて、サルコメア長を3 nmの精度で解析できる実験系を構築することに成功した。この実験系を使うことにより、今後、例えば変異遺伝子などを組み入れることにより、病態時の収縮、弛緩の変化について、nmの精度で解析を行うことが可能になる。さらに、in vivoマウスを用い、世界で初めて心臓内心筋細胞中サルコメア長変化および心筋細胞内Ca動態を高精度で計測することに成功した。顕微鏡の対物レンズにピエゾを設置し、心臓の動きにともなう焦点ズレの問題を克服することにも成功している。 これら一連の研究課題を今後強力に推進することによって、申請者らが目指す「in vivo興奮収縮連関」研究を創成することにつながると考えられる。したがって、これまでのところ、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後、以下の方針によって、本研究を強力に推進する。 細胞実験:心筋細胞においてはT管とZ線が並走していると信じられているが、この知見は静止状態における観察結果に基づいており、動的挙動をしている場合については誰も確かめていない。特に病態心筋(特に、拡張型心筋症や肥大型心筋症)では、T管とZ線の位置関係にずれが生じている可能性がある。T管とZ線を異なる波長の蛍光で観察し、この点を明らかにする。なお、申請者らは、トロポニンに変異を有する拡張型心筋症、肥大型心筋症のモデルマウスを有している。 動物個体実験:昨年度、マウスin vivo心臓において心筋サルコメアの長さを10 nmの精度で計測することのできる顕微システムの構築に成功した。この顕微システムに高速位置フィードバックを組み入れることによって計測精度を上げる。また、申請者らの目指す心臓のin vivo興奮収縮連関を実現するため、心筋細胞の膜電位情報と細胞内Ca濃度の同時計測を行う。膜電位情報は膜電位感受性色素を使う。Ca情報の抽出については、先ずは蛍光指示薬(Fluo-8など)を使う予定である。しかしながら、十分な精度が得られたかった場合、Ca濃度に依存して蛍光強度を変化させカメレオンをアデノウイルスベクターに組み込み、これをサルコメアのZ線に発現させることによって行う。カメレオンのベクター構築はほぼ終了している。これらの細胞内情報と心臓全体のマクロ情報(心電図、心臓内圧)を同時に計測し、ナノ、ミクロ、そしてマクロに至る、心臓の階層構造原理を明らかにする。さらに、拡張型心筋症マウス(トロポニンTに変異)を用い、in vivoにおける興奮収縮連関が正常動物と比べてどのように変化しているかを探る。
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