研究課題/領域番号 |
23300151
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研究機関 | 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所) |
研究代表者 |
神作 憲司 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 脳機能系障害研究部, 室長 (60399318)
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研究分担者 |
和田 真 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 脳機能系障害研究部, 研究員 (20407331)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 神経科学 / 対人関係 / 自己 / 身体性 / 社会性 |
研究概要 |
本研究では、脳で自己と外界の関係がどのように表現されているかを明らかとし、さらに対人関係の基礎となる脳内機構を明らかとすること目的とする。特にこの際、後部頭頂皮質等の多感覚野が、周辺時空間に対する物理的な観点からの自己の位置付けから、社会的な観点からの他者と自己の関係付けまでに関与しており、その機能不全が自閉症者の「逆さバイバイ」やひいては社会性の発達の阻害を引き起こすと仮定し、健常者および障害者を対象とする心理物理・神経画像研究、さらには動物モデルの開発を統合的に行う。 今年度は、研究グループが発見した腕交差によって外界と自己の身体の空間上の位置関係を入れ替えると左後部頭頂皮質に活動が生じる現象を手掛かりとして検討を重ねた。その結果、腕交差時に生じる触覚時間順序判断の逆転の大きさは、腕交差によって生じる左後部頭頂皮質の活動と相関すること等が明らかとなった。さらに、領域間機能結合を評価することで、腕交差によって、左後部頭頂皮質と右前頭前皮質との機能的結合が変化することを見出してきている。自閉症者を対象として腕交差時に生じる時間順序判断の逆転を調べた研究では、定型発達者に比べて自閉症者の逆転が有意に少ないことが示唆されている。また、これまで腕交差を伴う触覚時間順序判断の逆転は開眼時に比べ閉眼時の方がより大きくなることを明らかとしてきたが、さらに液晶シャッターで視野を隠すとその効果が消失することも見出した。その他、リアルタイムで機能結合を評価しフィードバックする実験系の立ち上げも行った。動物実験では、マウスが自己と外界の関係をどのように処理しているかについて評価するための新しい行動実験系の構築を行い、データを蓄積している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
健常者および障害者を対象とする心理物理・神経画像研究、さらには動物モデルの開発を統合的に行うとの研究体制が整い、データを蓄積している。また、左後部頭頂皮質の活動が自己と外界の関係把握に関与していることを見出し論文として公表するとともに、その際の機能結合変化を捉えたデータを北米神経科学会で発表しHOT TOPICSに選出された。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究を行うことで得られた所見をもととして研究を展開させていく。平成25年度は、自閉症者を対象としたデータの取りまとめ等を行うと共に、動物実験についてもさらに推進する。
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