研究課題
周産期心筋症 (Peripartum cardiomyopathy:PPCM) は、心疾患の既往がない女性が、周産期(妊娠期から産後にかけて)に心不全を発症し、死亡例も多く報告されている疾患である。少子高齢化が深刻化している我が国では、出産の健全化は急務であるが、周産期心筋症の原因は不明な点が多い。以前に我々は、7 回膜貫通型受容体・APJの心臓特異的過剰発現マウス (MHC-APJ) が、ヒトの周産期心筋症と類似の症状を呈することを発見した。これまでに、組織学的解析、遺伝子発現解析、エコカーディオグラフィーによる心機能の解析から、MHC-APJマウスがヒト周産期心筋症と同様な病態を呈することを確認し、MHC-APJマウスが本疾患のモデルマウスであると結論づけた。また、MHC-APJマウスにおける病態発症には「授乳」が必須であることを明らかにした。平成24年度は、授乳によって引き起こされる心臓でのイベントを明らかにするべく、野生型マウスとMHC-APJマウスのそれぞれに、授乳群・非授乳群を設定し、それらマウスの心臓を用いて網羅的遺伝子発現解析を行った。野生型マウスにおいて授乳で変化する遺伝子群、または、授乳をしているMHC-APJマウス(病態進展期)においてのみ変化する遺伝子群など、複数の絞り込み解析から、授乳により誘導される心臓イベントに関与する候補遺伝子を同定した。また、他グループから、Signal Transducer and Activator of Transcription 3(STAT3)の心筋特異的欠損マウスや、Peroxisome proliferator-activated receptor gamma coactivator 1-alpha(PGC1α)心筋特異的欠損マウスが周産期心筋症様の表現型を呈することが報告されているが、 MHC-APJマウスの心臓においてはこれらのシグナルは野生型マウスと差が認められなかった(正常であった)ことから、MHC-APJマウスの周産期心筋症発症には新規のシグナルが関与していることが示唆された。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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