研究課題/領域番号 |
23300153
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
國田 智 自治医科大学, 医学部, 教授 (10195472)
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研究分担者 |
八神 健一 筑波大学, 医学医療系, 教授 (40166476)
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キーワード | ノロウイルス / マウス / VP1タンパク質 / Pドメイン / 血清診断法 / PCR診断法 / 持続感染 |
研究概要 |
1)MNV感染検出系の確立とバリデーション 我々が分離したMNV株から組換えVP1抗原を作製し、ELISA法や蛍光マイクロビーズ(MFI)法による抗体測定系を構築した。また、MNV感染細胞を用いた間接蛍光抗体(IFA)法をMNV確定診断の目的で併用した。PCRでMNV陽性と判定された60検体を含む国内37施設に由来する310検体のマウス血清および同糞便サンプルを検査対象として各検査法を比較評価した結果、PCR検査はMNV感染初期の検出に優れ、PCR検査と各抗体検査は高い一致率を示した。一方、ウイルス排出が検出限界以下となった個体でも抗体検査は有効であり、その検出感度は92~88%、特異性は96~90%と推定され、特にMFIの検出感度の高さが実証された。 2)MNV感染マウスでのウイルス動態と免疫応答の解析 MNV感染マウスと同居させたBALB/cマウスでは、同居3週間後からMNV抗体陽性個体が出現し、6週間後に全個体が陽性と判定され、27週間後まで抗体価は上昇し続けた。糞便のPCR検査では、同居1週間後から27週間後まで全個体がMNV陽性と判定された。これらの成績から、本MNV株では持続感染が成立して糞便中へのウイルス排出が長期間続き、抗原刺激も持続して高い抗体価が維持されると推察された。MNVの組織分布や排出および抗体応答に影響を及ぼす宿主因子について比較解析中である。 3)MNV-VP1タンパク質のPドメインを網羅する短鎖タンパク質ライブラリーの構築とエピトープ解析 MNV-VP1のPドメインおよびP1-1、P1-2、P2サブドメインを組換え抗原として作製・解析し、P2サブドメインは抗MNV血清との反応性が強いことを示唆する結果が得られた。さらに、約50~100アミノ酸配列からなるPドメインの部分重複ライブラリーを構築し、抗体認識エピトープをマッピング中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
MNV感染検出系の確立とバリデーションは予定どおり完了し、MNV感染症のモニタリング法としても実用化可能になった。MNV体内動態と免疫応答の解析については、持続感染の状況を含め経時的動態が明らかとなり、宿主因子(系統差、雌雄差、週齢差)の影響をさらに検討する段階にある。Pドメインおよびサブドメインの組換えタンパク質の構築と反応性の解析もほぼ順調に完了し、詳細なマッピングの段階に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
MNVのVP1タンパク質のPドメイン部分領域を用いたELISA系によって、MNV感染マウス血清との反応性クローンの選別を進めてマウス抗体が認識するエピトープの詳細なマッピングを行うことにより、Pドメイン中の免疫応答・感染防御上重要な抗原領域を同定する。さらに、完全長Pドメインのdimerからウイルス粒子様のP粒子を形成させ、P粒子のMNVレセプター結合能やin vitroでのMNV増殖抑制効果を調べることで、Pドメインの機能解析へと研究を展開させる計画である。
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