マウスノロウイルス(MNV)の主要構造タンパク質であるカプシドタンパク質(VP1)の抗原性および免疫原性を解析し、VP1の各領域に対して誘導された抗体がノロウイルス感染阻止に有効であるかの解明を試みた。 1)VP1の抗原性解析:His-tag化したVP1-full component、VP1-Pドメイン、VP1-P2サブドメインを組換えタンパク質として大腸菌を用いた発現系で作製した。MNV実験感染マウス血清の各組換え抗原に対する反応性をimmunoblot法で解析した結果、VP1-full componentとの反応性が強く、PおよびP2との反応性はVP1抗原よりも弱いことが明らかになった。 2)VP1の免疫原性解析:PおよびP2の抗原性がimmunoblot解析に反映されない可能性も予想されるため、VP1-full component、Pドメイン、P2サブドメインをICRマウスに免疫し、各組換えタンパク質の免疫原性を解析した。免疫は40μgの各抗原をFreund’s incomplete adjuvantとの乳剤とし、皮下接種を3回繰り返した。免疫後のマウスから採取した血清中抗体のMNVに対する反応性を、細胞培養系で増殖・精製したMNVを抗原とするELISA法で測定した。その結果、P2が最も強力な抗MNV抗体誘導能を有することが明らかになった。 3)VP1による感染阻止効果の解析:MNV-UT株由来の組換えタンパク質を用いてICRマウスに抗体誘導し、MNV-JI10株に対する感染阻止効果を検討した。両株のVP-1タンパク質は97%のアミノ酸一致率であり、MNV分離株間では比較的一致率の高い関係にある。高力価の抗MNV抗体を産生したP2免疫群でMNV感染後のウイルス検出時期が遅延する傾向はみられたが、非免疫対照群と比較して有意な感染率低減効果は認められなかった。
|