研究課題/領域番号 |
23300158
|
研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
葛西 孫三郎 高知大学, 教育研究部・総合科学系, 教授 (60152617)
|
研究分担者 |
枝重 圭祐 高知大学, 教育研究部・総合科学系, 教授 (30175228)
越本 知大 宮崎大学, フロンティア科学実験総合センター, 教授 (70295210)
|
キーワード | 凍結保存 / 魚類卵子 / 水チャンネル / 不凍タンパク |
研究概要 |
魚類卵子の凍結保存は未だ成功していない。その原因は、卵子のサイズが哺乳動物の卵子・胚より非常に大きいため、細胞膜を介した水と耐凍剤の移動に時間がかかり、凍結・融解時に細胞内に氷晶が形成されやすいためだと考えられる。もし、細胞膜透過性を向上させて水と耐凍剤を速やかに細胞内外に移動できるようにしたり、細胞質そのものを氷晶形成しにくくすることができれば、凍結保存が可能になると考えられる。そこで、ゼブラフィッシュのstage III卵子を用いて、水・耐凍剤チャンネル(AQP)と不凍タンパク質を人為的に卵子に発現させ、凍結保存が可能になるかどうかをしらべた。まず、stage III卵子にマウスAQP3あるいはAQP9のcRNAを注入して数時間培養した。その結果、卵子の耐凍剤透過性は向上し、これらのチャンネルは細胞膜で発現していることが確認された。しかしながら、ガラス化凍結後にすべて死滅した。細胞内氷晶形成によると考えられた。次に、ウインターフラウンダー由来不凍タンパク質のcRNAを卵子に注入して数時間培養した。その結果、卵子の細胞質画分の氷点が低下し、不凍タンパク質が細胞質内で発現していることが確認された。しかしながら、ガラス化凍結後にすべて死滅した。細胞内氷晶形成によると考えられた。細胞内へcRNAを注入した後の培養時間が比較的短かったため、これらの外来性タンパク質が細胞内に十分蓄積せず、卵子の細胞膜透過性の向上あるいは細胞質内での氷核形成の抑制が不十分となり、凍結・融解時の卵子の細胞内氷晶形成を抑制できなかったと考えられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ゼブラフィッシュのstage III卵子でのcRNA注入による外来性タンパク質(水・耐凍剤チャンネルと不凍タンパク質)の発現に成功し、これらの発現が卵子の細胞膜透過性を向上させ、細胞質の氷核形成を抑制することは確認できたが、凍結保存の成功には至っていない。
|
今後の研究の推進方策 |
ゼブラフィッシュのstage III卵子は大きく、成熟卵子に近い大きさである。凍結保存に成功するには、水・耐凍剤チャンネルおよび不凍タンパク質をより一層卵子内に蓄積させることが必要だと考えられる。我々が開発した卵子の成熟培養系では、採卵後すぐに成熟を誘起しないと成熟率が大きく低下してしまう。現在、成熟誘起前に12~24時間維持できる培養系を開発中である。維持が可能になれば、これらのタンパク質を細胞内に十分蓄積させることができ、凍結保存が可能になると考えられる。また、平成24年度に行う予定の未熟で極めて小さいstage I卵子での水・耐凍剤チャンネルおよび不凍タンパク質の発現とその凍結保存にも積極的に取り組む。
|