研究課題/領域番号 |
23300158
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
葛西 孫三郎 高知大学, 教育研究部総合科学系, 教授 (60152617)
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研究分担者 |
枝重 圭祐 高知大学, 教育研究部総合科学系, 教授 (30175228)
越本 知大 宮崎大学, フロンティア科学実験総合センター, 教授 (70295210)
松川 和嗣 高知大学, 教育研究部総合科学系, 准教授 (00532160)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 凍結保存 / 魚類卵子 / アクアポリン / 不凍タンパク質 |
研究概要 |
魚類卵子の凍結保存は未だ成功していない。その原因は、哺乳類の卵子・胚と比べて体積が著しく大きいためである。本研究では、未熟な卵子の卵巣への移植法や我々が開発したLHサージ前のゼブラフィッシュ未成熟卵子(stage III中期)の体外成熟培養系を用いて魚類未成熟卵子に水・耐凍剤チャンネルや不凍タンパク質を発現させて、魚類卵子の凍結保存に世界で初めて成功することを目的とした。まず、極めて未熟なStage I卵子に水/耐凍剤チャンネルであるaquaporin 3 (AQP3)とウインターフラウンダー由来不凍タンパク質ペプチドのcRNAを注入して12時間培養して発現させ、25℃の15%v/vメタノールと15%v/vプロピレングリコールを含むFS液(10%v/vFicoll PM-70と0.2 Mスクロースを含む90%LM液(pH 9.0))(ガラス化保存液)で1分間処理してガラス化凍結した。融解後、50~70%の卵子が形態的に正常で、propidium iodideによる生死染色でも約10%の卵子が生存していた。しかしながら、1時間培養すると、全ての卵子が死滅した。次に、体外成熟が可能なstage III中期卵子にAQP3と不凍タンパク質ペプチドのcRNAを注入して12時間培養し、25℃の5%v/vメタノールと5%v/vプロピレングリコールを含むFS液で1時間前処理した後、25℃のガラス化保存液で5分間処理してガラス化凍結した。融解後、約40%の卵子が形態的に正常で、約10%の卵子が生死染色でも生存していた。しかしながら1時間培養すると全ての卵子は死滅した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
水/耐凍剤チャンネルや不凍タンパク質を人為的に発現させることによって、ゼブラフィッシュ未成熟卵子のガラス化法による凍結において耐凍性が向上することがわかった。特にサイズが大きいstage III中期卵子でも凍結/融解直後の生死染色で生存している卵子が得られたことは大きな進歩であると判断される。しかしながら、最終目標である凍結保存の成功には至っていない。また、サイズの小さい未熟なstage I卵子においても、これらのタンパク質の発現によって耐凍性は向上しているが、凍結保存後の生存性は低く、卵巣へ移植する段階にまでは至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、ガラス化法と比較して水と耐凍剤をゆっくりと出入りさせることができる、緩慢法によるstage Iとstage III中期卵子の凍結保存を試みるともに、凍結補助物質としてヒノキチオール等の不凍物質を用いてガラス化凍結を試みる。また、卵巣への移植を必要としないstage III中期卵子の生存性を向上させるために、体外成熟培養法の改良を試みる。
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