研究課題/領域番号 |
23300164
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
高谷 節雄 日本大学, 医学部, 客員教授 (40154786)
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キーワード | 小児補助人工心臓 / 心臓移植 / 小児心疾患 / 遠心ポンプ / 流体軸受 |
研究概要 |
23年度研究費の繰越金による研究は、インペラーローターの射出成型とトップハウジングの流入・流出ポートの形状について検討した。 インペラーローターは直径30mm、6枚羽根を有し、磁気カプリング用の永久磁石を内蔵しており、切削加工では、6枚羽根を有するトップ部と6極の永久磁石を埋蔵するボトム部を別々に成形し、永久磁石をボトム部内に固定し、エポキシ樹脂にて充填した後、トップ部とボトム部を接着していたが、切削加工による表面粗さや組立工程における個体差等の影響で生体適合性に問題を生じていた。そこで23年度の研究を継続し、ポンプの生体適合性を向上させると共に量産化に向けて。インペラーローター部の射出成型のための金型を設計試作した。射出成型行程においては、金型を摂氏200度以上に熱し、液化したポリカーボネートを金型内に注入した後、冷却することで短時間で再現性に優れた成形が可能になるが、インペラーローターに内蔵する永久磁石は摂氏200度以上の高温でその磁力が劣化するため、着磁する前のネオジム鉄を金型内に固定し、射出成型した後に着磁することで、射出成型時の高温による磁力劣化を防ぐことに成功した。結果、表面粗さ、組立工程等の影響を受けない再現性に優れたインペラーローターの製造を達成した。 トップハウジングの流入・流出ポートの形状は、血液ポンプの解剖学的適合性に影響を与えると同時に流体力学的観点からポンプ内流れに影響を与え、生体適合性を左右する。そこでトップハウジングの流入・流出ポートの方向性について、CADを用い3次元的に検討し、体重30Kgの豚を用いその解剖学的適合性並びにポンプ性能に及ぼす影響について評価・検討した。最終形状については、体外並びに植え込み両方に適用可能な形状を25年度の動物実験において検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、先天性並びに後天性小児心疾患の治療において、合併症の軽減、患者QOLの向上、心機能の診断並びに次なる治療手段の構築を可能にする日本発、ウエアラブルな小児用、遠心式補助人工心臓システムの開発に必要な1)ポンプ素材、成型法、血液接触面の処理方法の研究、2)回転する羽根車を非接触の状態に支える流体軸受の研究、3)薄型、高効率ディレクトドライブDCブラッシュレスモーターの研究開発、4)ポンプ流量、ヘマトクリット、溶血量並びにポンプ消費電力の非侵襲的計測方法の研究並びに5)体重10~20Kgの小児動物において、安全有効な左心バイパス方法に関する研究を遂行し、小児補助人工心臓の開発に必要な基礎研究を展開することである。 1)に関しては、インペラーローターの射出成型法を確立することで、血液適合性に優れたポンプ要素技術の量産化のための技術を確立した。ポンプ素材としては、医療用ポリカーボネートの応用、血液接触面はMPCポリマーの適用についても検討した。 2)流体軸受に関する研究に関しては、バランスの取れた磁気カプリング駆動法を実現することで回転周期に影響を受けない流体隙間、非接触駆動を確認した。 3)ポンプシステムの小型化に向け、薄型モーターの設計、シミュレーションを行い、ポンプシステムの小型化(直径55mmx高さ30mm)を達成した。また、流入・流出ポートの形状についても検討した結果、体外式並びに体内植え込みに適用可能なポンプ形状について体重30Kgの豚を用いた動物実験においてその適用性を確認した。 4)モーター消費電力と流量との関係について検討し、非侵襲的ポンプ流量測定法の開発に繋がることを確認した。
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今後の研究の推進方策 |
25年度の研究の推進方策は、1)試作した薄型モーターを使用し、ポンプシステムを組立、ポンプとしての性能、ポンプ効率(入力電力と出力流体パワーの比率)、安定性、耐久性について模擬循環回路を用い検討する。2)射出成型したインペラーローターを用いポンプシステムを組立、回転制御の安定性、溶血性能につぃて試験し、動物実験を計画する。3)1)、2)の成果が十分な場合、流入・流出ポート形状が異なるトップハウジングを用い、ポンプ性能について評価する。4)薄型モーターの制御装置、コンソールの開発を進め、ウエアラブル、小児用補助人工心臓システムとして完成させる。5)小児山羊(芝ヤギ)を用いた慢性実験(1カ月)の可能性について検討する。
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