研究課題/領域番号 |
23300164
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
高谷 節雄 日本大学, 医学部, 客員教授 (40154786)
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研究分担者 |
塩野 元美 日本大学, 医学部, 教授 (20170847)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 小児補助人工心臓 / 心臓移植 / 小児心疾患 / 遠心ポンプ / 流体軸受 |
研究概要 |
本年度は、1)ポンプ本体の体内植え込みの可能性について、体重30Kgの豚を用い検討した。当初は、ポンプ本体を胸腔内に植え込むため、入力ポートにカフを固定し、左心心尖部に挿入し、1/4"流出ポートに内径8mmの人工血管の片端を、もう一端は下行大動脈に吻合した。胸腔内への収まり具合を評価するため、流入、流出ポートの形状、角度の違うトップハウジング((a)流入ポートが流出ポート面に垂直に入る、(b)流入・流出ポートが同面において並行、(c) 流入・流出ポートが同面に存在し間角度30度、(d)流入・流出ポートが同面に存在し間角度70度)を作成し、評価した。結果、(c)のトップハウジングが植え込み、体外の使用において、最適であることが分かった。 2)ポンプ流量制御を目的に、モーター電流値を計測し、電流値とポンプ流量の相関について検討し、電流値や電流波形からポンプ流量を推測する方法について検討した。 3)現在、回転用モーターはマクソン社のDC ブラッシュレスモーターを使用しているが、ポンプ本体の小型、薄型化を推進するため、新規モーターの開発を行った。結果、現在のポンプシステムは、外径58mm、高さが40mmに対して、新しく開発したモーターを使用した場合、外径58mm、高さ30mmに薄型化(75%)、小型化(体積縮小75%)に成功した。現在モータードライバー並びにコンソールの開発を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、先天性並びに後天性小児心疾患の治療において、合併症の軽減、患者QOLの向上、心機能の診断並びに次なる治療手段の構築を可能にする日本発、ウエアラブルな遠心式補助人工心臓システムの開発に必要な1)ポンプ素材、成型法、血液接触面の処理方法の研究、2)回転する羽根車を非接触の状態に支える流体軸受野研究、3)薄型、高効率ディレクトドライブDCブラッシュレスモーターの研究開発、4)ポンプ流量、ヘマトクリット、溶血量並びにポンプ消費電力の非侵襲的計測方法の研究並びに5)体重10~20Kgの小児動物において、安全有効な左心バイパス方法に関する研究を遂行し、小児補助人工心臓の開発に必要な基礎研究を展開することである。 1)に関しては、インペラーローターの射出成型法を確立することで、再現性、生体適合性に優れた直径30mm、6枚羽根を有する磁気カプリング用、インペラーローターの量産化に向けた製造方法を達成した。素材としては、医療用ポリカーボネートを用い、製造が可能である。 2)流体軸受に関する研究に関しては、バランスの取れた磁気カプリング駆動法を実現することで回転周期に影響を受けない流体隙間の実現、流体軸受の実現を達成した。 3)ポンプシステムの小型化に向け、薄型モーターの設計、シミュレーションを行い、ポンプシステムの小型化(直径58mmx30mm)を達成した。また、流入・流出ポートの形状についても検討した結果、体外式並びに体内植え込みに適用可能なポンプ形状をデザインし、体重30Kgの豚を用いた動物実験においてその適用性を確認した。 4)体重30Kgの豚を用いポンプ流量、消費電力等の計測とその応用について検討した。
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今後の研究の推進方策 |
25年度の研究の推進方策は、1)試作した薄型モーターを使用し、ポンプシステムを組立、ポンプとしての性能、ポンプ効率(入力電力と出力流体パワーの比率)、安定性、耐久性について模擬循環回路を用い検討する。2)射出成型したインペラーローターを用いポンプシステムを組立、回転制御の安定性、溶血性能につぃて試験し、急性動物実験の可能性を検討する。3)1)、2)の成果が十分な場合、流入・流出ポート形状が異なるトップハウジングを用い、ポンプ性能について評価する。4)薄型モーターの制御装置、コンソールの開発を進め、ウエアラブル、小児用補助人工心臓システムとして完成させる。5)小型山羊を用いた慢性実験(1カ月)の可能性について検討する。
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