研究概要 |
マウスに全身性の高周波・微振動を負荷するためのシステムを構築した.振動コンソール(電力増幅器+ファンクション・ジェネレータ)で発生した正弦波電圧を振動発生器に入力し,振動台に固定したマウスケージを加振できるようにした.振動源には骨代謝に悪影響を及ぼす騒音ストレスを抑えるため,静音動電型の高周波微振動発生器を利用した.ケージ底板には加速度計を埋め込み,検出された加速度を振動制御装置にフィードバックし,所期の振動パターンが得られるように振動コンソールへの入力電圧を制御可能とした.実験の効率化を図り,マウスケージは8匹を個別に収容可能とした. この装置を用いて予備実験を行った.マウスの脛骨にドリル欠損を作製し,これまでにマウスの骨粗鬆症モデルや成長促進に有効であると報告されている振動振幅・周波数(0.3g,30Hz;0.3g,90Hz)で,術後3日目より毎日1時間,術後2週まで負荷した.実験終了後,麻酔下で腹部大動脈より血管鋳型剤を投与し,冷水に晒してこれをゲル化,脛骨術部を摘出・エタノール固定して欠損部試料を作製した.試料は放射光施設SPring-8にて,ジルコニアk吸収端の直上(18.1keV)および直下(17.9keV)でスキャン(分解能2.74μm)した.各スキャンから得られた再構成イメージをレジストレーションし,画像差分して血管と再生骨を分離した.振動負荷を与えないマウスについて同様に作製した試料と比較した結果,振動負荷を与えたことにより血管形成は増強され,修復が促進される傾向がみられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
予備実験はほぼ計画通りに進めることができた.しかし,放射光利用の時間的制約とCT画像解析の精度を向上するためのアルゴリズムの改良に予想以上の時間を費やしたことで,全ての解析が完了していない.現在,新しいアルゴリズムは完成し,残りの解析を進めている.
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今後の研究の推進方策 |
特に研究計画に大きな変更はなく,遂行上の問題はない,今年度は予備実験の結果に基づいて,除負荷状態のマウスを対象に実験を行い,統計解析が十分に可能な試料数が得られるよう実験計画を遂行する.また,放射光計測をなるべく早い時期に行えるように動物実験頻度を増やし,試料作製の効率を上げる。
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