研究課題/領域番号 |
23300165
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
松本 健志 大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (30249560)
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研究分担者 |
田中 正夫 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (40163571)
安井 武史 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 教授 (70314408)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 全身性高周波微振動 / 血管新生 / 骨再生 / コラーゲン / 放射光CT / 第2高調波発生光 |
研究概要 |
全身性高周波微振動(WBV)は骨折治癒を促進する有効な方法として注目されているが,そのアナボリック効果のメカニズムは十分に明らかにされていない.本課題では骨損傷部への栄養や酸素,成長因子の供給や骨形成前駆細胞の運搬を担う血管新生に着目し,WBV効果への関与を検証しようとするものである.前年度はWBV負荷システムを構築し,後肢廃用マウスの脛骨ドリル欠損の修復に対するWBVの効果について予備的検討を行った. 今年度は予備実験で有効性が確認された0.3g,30HzのWBVの効果について,より詳細な検討を行った.マウス脛骨欠損モデルをWBV群と対照群に分け,欠損作製日の2日後からWBV群には全身性高周波微振動を毎日20分与え,対照群については1日20分振動ケージに入れるのみとした.各群について術後6日,9日,あるいは12日後にジルコニア造影鋳型剤を注入し,脛骨欠損部の血管鋳型試料を作製した.ジルコニアのk吸収端を利用したサブトラクション放射光CT(SPring-8)により再生骨と新生血管を3Dイメージングし,再生骨/新生血管体積率,骨ミネラル密度などを算出した.術後12日には対照群に比してWBV群において有意な治癒促進が認められた.術後6,9日にも有意差は無いがWBV群で治癒は促進される傾向にあった.一方,予想に反してWBV群では対照群ほど血管新生は誘導されず,術後12日ではWBV群で有意な抑制が見られた.この原因については次年度の課題とする. また,WBVのコラーゲン形成への関与を解析するため,第2高調波発生光・共焦点マイクロスコピーを非脱灰骨欠損切片に応用し,これによって得られたコラーゲン分布イメージとCTミネラルイメージを空間マッチングして評価する手法を確立した.予備実験では従来の報告と一致して,ミネラル化に先立つコラーゲンの過剰生成が認められた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本課題で構築した高周波微振動(WBV)負荷システムを利用し,WBVの周波数および振幅(加速度)がその骨修復効果に及ぼす影響,血管新生の関与について,放射光CT,コラーゲン共焦点イメージングを利用した解析を予定通り進めている.また,治療後・除荷(安静)におけるWBVの骨修復効果についても,坐骨神経切断マウスモデルを用いて検討済みである.但し,血管新生について予想と反した結果が得られたため,その解明に向けて追加実験が必要となり,WBV効果の加齢依存性についての実験には着手できなかった.
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今後の研究の推進方策 |
今年度はまず,高周波微振動(WBV)による骨循環への作用を明らかにすることを目的とし,WBV負荷中,あるいは負荷前後の骨微小循環の観察を行う.その結果を踏まえ,WBV効果をより増強するための介入(血管新生促進薬の投与など)を試みる.さらに,骨修復能が低下していると考えられる加齢を含む骨粗鬆症の病態モデルを対象にWBVの効果を検証する.
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