研究課題/領域番号 |
23300168
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
安田 隆 九州工業大学, 生命体工学研究科(研究院), 教授 (80270883)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ナノワイヤ / DNA / インターカレータ / 金属被覆 / マイクロ流路 / 静電配向 / 血液検査 |
研究概要 |
本研究で用いるDNA鋳型ナノワイヤ形成法は、ナフタレンジイミドの両末端に還元基を有するインターカレータをDNAの2本鎖間に挿入することで還元基をDNAに沿って配列させ、その後にDNAの近傍で銀イオンを還元することでDNAを金属被覆するものである。したがって、本手法によれば、1本鎖DNAを金属被覆せずに、2本鎖DNAのみを特異的に金属被覆することができるはずである。これを実証するために、以下のようにして、同じ鎖長(約2μm)の1本鎖と2本鎖のDNAに対して金属被覆処理を行い、インピーダンス評価とAFM観察を行った。 まず、ガラス基板上に1μmの間隔を持ったAu電極を作製し、マイクロ流路を用いてDNA溶液を電極間に導入し交流電圧を印加することで電極間にDNAを伸長固定した。そして、金属被覆処理を行った後に、1本鎖と2本鎖の処理前後の交流インピーダンスを評価した。その結果、いずれも処理前には大きな抵抗成分とコンデンサ成分が見られたが、処理後には1本鎖の特性に変化が無かったのに対して、2本鎖の場合にはコンデンサ成分が消失し、抵抗値が10000分の1に減少した。 次に、予め還元剤と混合したDNA溶液をマイカ基板上にスピンコートすることで、メニスカス力を利用してDNAを基板上に伸長固定し、その後に銀イオンを含むトレンス試薬を滴下することで金属被覆処理を行った。処理前後の1本鎖と2本鎖の外径をAFMにより計測したところ、2本鎖では約2nmから20~40nmに増大し、1本鎖では変化が見られなかった。 さらに、DNA鋳型ナノワイヤの金属表面における局在表面プラズモン共鳴を血中タンパク質検出に応用することを想定して、マイクロ流路中に固定化した金ナノ粒子表面への抗体固定化法の最適化などを行い、実際にタンパク質の検出が可能であることを実験により示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書の研究実施計画に記載した、2本鎖DNAの特異的金属被覆の詳細な検証や、マイクロ流路中での局在表面プラズモン共鳴を利用したセンシング技術の構築などの計画内容を実施し、当初目標としていた成果を得ることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
1本鎖と2本鎖が複合したDNAをマイクロ流路中の微小電極間に伸長固定し、2本鎖部位のみを金属被覆してナノワイヤを形成する。ナノワイヤの形状をAFMで観察することで、2本鎖部位のみが選択的に金属被覆されることを確認する。1本鎖及び2本鎖の長さ、試薬の濃度、反応時間などの条件を様々な値に変更し、それぞれの条件で形成されたDNA鋳型ナノワイヤの形態やインピーダンス特性などを評価する。 次に、上記で形成したDNA鋳型ナノワイヤを利用して、急性心筋梗塞などの新たな診断マーカーとして期待されているDNA分解酵素を計測する手法を構築する。すなわち、2本鎖部位が金属被覆され1本鎖部位が金属被覆されていないナノワイヤに対して、DNA分解酵素を作用させることで1本鎖部位を切断し、この切断前後のナノワイヤのインピーダンス変化からDNA分解酵素の活性を計測する。1本鎖部位と2本鎖部位の長さや配置などが測定感度や測定限界などに与える影響を明らかにする。 さらに、毛細管力のみで全血から血漿のみを抽出するマイクロ流路の形状、寸法、構成、製作法、表面処理法などを最適化する。そして、マイクロ流路中にDNAを伸長固定するための微小電極を形成し、上記と同様の手法を用いて2本鎖部位のみが金属被覆されたDNA鋳型ナノワイヤを形成する。これにより、血中のDNA分解酵素を極めて簡便に計測するデバイスシステムを創出する。
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