研究課題/領域番号 |
23300170
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研究機関 | 東京電機大学 |
研究代表者 |
舟久保 昭夫 東京電機大学, 理工学部, 教授 (00307670)
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研究分担者 |
幡多 徳彦 東京電機大学, 理工学部, 助教 (00570946)
本間 章彦 東京電機大学, 理工学部, 教授 (20287428)
福井 康裕 東京電機大学, 理工学部, 教授 (60112877)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | MBD人工肺 / Perfluorocarbon / 膜型人工肺 / マイクロサイズ / シリコーンホローファイバー / ガス交換能 / 数値流体解析 / 最適化設計 |
研究概要 |
本研究では,長期使用における血漿漏出や血栓形成などの問題を抱える膜型人工肺に替わるこれまでにない新たな人工肺を開発した。中空糸膜を使用せず、酸素溶解度の高いPerfluorocarbon(PFC)と血液を直接接触させることでガス交換を行うことが可能であるマイクロ血液ドロップ型人工肺(Micro Blood Drops Oxygenator、MBD人工肺)を提案し、MBD人工肺のガス交換能の検討、マイクロドロップ血液のガス交換能の理論化を基にしたシミュレーションによる最適化設計などを目的とした。さらに、実用化に向け小型で高いガス交換能を得るため、血液滴とPFCの接触時間の増加および血液のみの排出が可能となるハウジングを開発し、性能評価を行った。 開発したハウジングは血液滴とPFCの接触時間の増加を行うため、ハウジング内に螺旋形状の羽根を設けた。これにより、血液滴は螺旋状に上昇し、PFC内での浮上軌跡距離は約523 mmとなり、従来モデルと比べて約2倍の距離であった。牛血液を用いたin-vitro評価では、人工肺一回通過後のガス交換能については血液流量が0.25 L/minの場合、PaO2は314.9 mmHgとなり、PaCO2は22.3 mmHgとなった。また、血液流量が0.45 L/minの場合PaO2は331.5 mmHgとなり、PaCO2は20.0 mmHgとなったことから膜型人工肺と遜色なくガス交換を行うことが可能となった。一方、60分間人工肺システムにおいて血液を循環させた時の溶血性能については、60分後における溶血量は血液流量0.25 L/minでは約40 mg/dL、血液流量0.45L/minでは約45 mg/dLとなり、目標値である50 mg/dL以下を達成し、新たな人工肺として有用性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
開発したハウジングは血液とPFCの接触時間の増加を行うため、ハウジング内に螺旋形状の羽根を設けた。これにより、血液の浮上軌跡が螺旋状となり、PFC内での浮上軌跡距離は約523 mmで、従来モデルと比べて約2倍の距離を実現した。牛血液を用いたin-vitro評価では、一回通過法において膜型人工肺と遜色なくガス交換を行うことが可能とした。一方、60分間人工肺システムにおいて血液を循環させた時の溶血性能については、血漿遊離ヘモグロビン濃度が各血液流量共にバラつきが確認されたが、溶血量は目標値以下を達成し、新たな人工肺として有用性が示された。しかし、現在血液滴をマイクロ径にするために使用しているアスピレータでは、得られる血液流量がPFC流量に依存するため、血液流量が不足する。また、ハウジングからPFCを排出する際の流れに血液が巻き込まれ、PFCリザーバーに血液が混入する問題が残されており、このため達成度を②とした。
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今後の研究の推進方策 |
1) PFCを介するMBD人工肺のガス交換能、血液・PFC流量およびハウジング設計の検討 本研究で開発するMBD人工肺はPFCと血液を分離するハウジング、ローラーポンプ、リザーバーおよび血液滴をマイクロ径にするためのアスピレータから構成されている。MBD人工肺システムは優れたガス交換能を有する一方で、血液流量の不足する問題がある。そのため、アスピレータに流入させるPFC流速、流入方法およびハウジングの最適化を行い、血液滴径、血液流量、PFC流量および血液滴の流入方法によるガス交換能について検討し、血液流量の改善を行う。 2) マイクロドロップ血液のガス交換能の理論化を基にしたシミュレーションによる最適化設計 血液滴の滴径変化に対する酸素化の理論を基に実用化のためにシミュレーションを踏まえた新たな理論構築を行う。多目的遺伝アルゴリズム(Multi objective Genetic Algorithm:MOGA)を用いてPFC内における血液滴の滴径に対する流れのシミュレーションを行い、MBD人工肺の最適化設計を行う。 3) シリコーンホローファイバーを用いたPFCガス交換システムの構築と最適化 MBD人工肺は、PFCに血液を直接接触させてガス交換を行うため、徐々にPFCのガス分圧の低下が生じ、MBD人工肺の性能低下が生じる。そのためPFCのガス交換を行う人工肺が必要となる。PFCは血液とは異なり圧力損失や溶血を考慮する心配がなく、酸素透過性に優れたシリコーン中空糸膜を人工肺ハウジング内に高密度で充填することが可能である。そこで数値流体解析(Computational Fluid Dynamics:CFD)を用い、ハウジング内におけるPFC流れのシミュレーション解析を行い、ハウジングの小型化を図る。CFD解析により、得られた結果を基に3次元光造形機を用いて人工肺ハウジングを作製する。
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