研究概要 |
本研究では, 長期使用における血漿漏出や血栓形成などの問題を抱える膜型人工肺に替わるこれまでにない新たな人工肺を開発した。中空糸膜を使用せず、酸素溶解度の高いPerfluorocarbon (PFC)と血液を直接接触させることでガス交換を行うことが可能であるマイクロ血液ドロップ型人工肺(Micro Blood Drops Oxygenator、MBD人工肺)を提案し、MBD人工肺のガス交換能の検討、マイクロドロップ血液のガス交換能の理論化を基にしたシミュレーションによる最適化設計、シリコーンホローファイバーを用いたPFCガス交換システムの構築と最適化などを目的とした。さらに、実用化に向け小型で高いガス交換能を得るため、血液とPFCの接触距離の増加および血液のみの排出が可能となるハウジングを開発し、性能評価を行った。 開発したハウジングは血液とPFCの接触距離の増加を行うため、ハウジング内に螺旋形状の羽根を設けた。これにより、血液の浮上軌跡が螺旋状となり、PFCとの接触距離は約523mmで、従来モデルと比べて約2倍の距離となり、牛血液を用いたin-vitro評価では、人工肺一回通過後のガス交換能については血液流量が0.25L/minの場合、PaO2は314.9mmHgとなり、PaCO2は22.3m血Hgとなった。また、血液流量が0.45L/minの場合PaO2は331.5mmHgとなり、PaCO2は20. OmmHgとなったことから膜型人工肺と遜色なくガス交換を行うことが可能となった。また、人工肺内部形状について最適化し、血液とPFCの境界層での血液流れを制御することでPCF排出時の血液混入を防ぎ、血液のみの排出を実現し、より実用的で新たな人工肺として有用性が示された。
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