研究課題
ラット新生児心筋のカルシウムハンドリング機構の発達過程解析のため、出産後の仔ラットの心臓を摘出後、ランゲンドルフ灌流下に蛍光カルシウム指示薬(Fluo-3 AM)を負荷し、心筋細胞内カルシウム濃度一過性上昇を観察・記録した。出生後の経時的変化について現在解析中であるが、経過に伴い、心筋細胞内カルシウム濃度のピーク値増大とカルシウム濃度一過性上昇持続時間の延長が認められる傾向にあることが確認できた。一般に心筋細胞内カルシウム濃度が高いほど、また、カルシウム濃度一過性上昇の持続時間が長いほど強く大きい心筋収縮が導かれることが知られている。新生児心臓の発達過程でこのような経過が証明できれば、体循環血圧が成長に伴い変化しないことと、成長に伴う心臓サイズの増大が心室壁張力の増大を必要とすることの関連について、ラプラスの法則に基づいて説明できると考える。この関連についてラット新生児の左心機能の評価を行うため、コンダクタンスカテーテルによる圧容積関係の解析を開始している。 ラット新生児の無負荷心臓モデルおよび生体内で正常に発達させた心臓について、コンダクタンスカテーテルシステムを用いて、左心室圧容積解析を行う。一般的に哺乳類の血圧はほぼ100mmHg前後であり、齧歯類であっても変わらないことが知られている。また、この血圧により十分な毛細血管灌流が得られるが、それは新生児であっても基本的には変わらない。収縮期左心室圧はラプラスの法則により心筋細胞の最大発生張力と左心室径により決定される。しかし、新生児単離心筋は成体のそれとは異なり星状細胞であるためその張力測定は困難であると思われる。そこで、左心室容積および左心室内径および外径と収縮期末圧から左心室壁ストレスを導出し、心筋細胞の発達過程により左心室壁ストレスがどのように増大していくかについて解析を行っている。
2: おおむね順調に進展している
出生後の様々な日齢での心筋細胞の単離手技も安定し、単離心筋細胞の生存率も問題なくなっている。心筋細胞内カルシウム濃度の計測についても安定的に蛍光カルシウム指示薬からの信号を記録できるようになってきている。また、同様に単離心筋細胞を用いるPassiveStiffness解析においても、特段の問題は生じていない。ただし、新生児期の単離心筋細胞は星状細胞であるのに対し、2~3週齢の単離心筋細胞は桿状細胞である。これによりPassive Stiffness解析の結果を解釈する際に、従来とは異なるモデルを構築して議論する必要がある。コンダクタンスカテーテルシステムを利用して、新生児期のラット左心室圧容積関係の解析を開始しているが、装置の不具合により現在計測が滞っている。至急、修理をした上で実験を再開したい。
ラット新生児の無負荷心臓モデルおよび生体内で正常に発達させた心臓について、コンダクタンスカテーテルシステムを用いて、左心室圧容積解析を行う。一般的に哺乳類の血圧はほぼ100mmHg前後であり、齧歯類あっても変わらないことが知られている。収縮期左心室圧はラプラスの法則により心筋細胞の最大発生張力と左心室径により決定される。しかし、新生児単離心筋は成体のそれとは異なり星状細胞であるためその張力測定は困難であると思われる。そこで、左心室容積および左心室内径および外径と収縮期末圧から左心室壁ストレスを導出し、心筋細胞の発達過程により左心室壁ストレスがどのように増大していくかについて解析を行う。心筋細胞単体の発生張力の増大は、新生児期の星状細胞から成体の桿状細胞に変化する過程で、収縮蛋白の十分な合成と心筋線維六角格子構造の発達が欠かせない。従って、上記の様に予想される左心室壁ストレスの増大に伴い、心筋細胞の構造自体が大きな変化を示すはずである。そこで、原子間力顕微鏡(川崎医療福祉大学に設置済み)を利用し、弛緩状態での心筋のPassive Stiffnessについて解析を行う。新生児期の正常細胞であれば、細胞自体の応力変形性も高く、Passive Stiffnessも低いと予想される。成長に伴い、心筋線維六角格子構造が発達してくると、収縮蛋白とそれをアンカーするZ板に介在する各種蛋白により、心筋線維の格子構造自体に水分が閉じ込められ応力変形性を大きく低下させると考えられる。また、発生張力の増大は心筋の興奮収縮連関に大きく関わる部分であり、心筋細胞内カルシウム動態にあずかる蛋白の発現量も変化しているはずである。そこで、心筋細胞内のカルシウム濃度解析を行うと共に、ミトコンドリアについての解析も行い、心筋興奮収縮連関の発達過程についても解析を行う。
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Circulation Journal
巻: 77 ページ: 741-748
10.1253/circj.CJ-12-0779