研究概要 |
1)カチオン性脂質含有ハイブリッドリポソーム(HL)のヒト大腸がん(HCT116)細胞に対する増殖抑制効果と制がんメカニズムをin vitroで検討した。カチオン性脂質含有HLはHCT116細胞の細胞膜に融合してアポトーシスを誘導し、増殖を著しく抑制することが明らかとなった。(Biol. Pharm. Bull., 35, 2097 (2012)) 2)HLのヒト大腸がん(CRC)の肝転移モデルマウスに対する治療効果をin vivoで検討したところ、アポトーシス誘導による治療および延命効果が明らかとなった。さらに、蛍光ラベルしたHL-25を用いた体内動態試験において、腫瘍部位への長時間の選択的蓄積が明らかとなった。(Euro. J. Med. Chem., 57, 143 (2013)) 3)成人T細胞白血病 (ATLL, MT-4)細胞の肝転移モデルマウスに対する治療効果を検討した。肝臓重量測定、HE染色および免疫染色 (CD4, CD25) による組織学的解析においてHL-25の静脈投与により、肝臓での MT-4 細胞増殖を顕著に抑制することが明確となった。さらに、顕著な延命効果 (p< 0.01)、が明らかとなった。(Nano Bull., 1, 120105 (2012)) 4)HL-23のマウス骨肉種(LM8)細胞の肺転移に対する治療効果をin vitroおよびin vivoで検討した。in vitroにおいて、HL-23はLM8細胞の仮足形成を阻害し、遊走・浸潤を抑制することが確認された。in vivoにおけるLM8細胞の肺転移モデルマウスに対するHL-23の静脈投与により、原発巣からの浸潤をアポトーシス誘導により抑止し、肺への転移を著しく減少させることを明らかにした。(Cancer Med., (2013), in press.)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ハイブリッドリポソーム(HL)によるがん治療に関し、(1)in vitroにおいて、カチオン性脂質含有HLがヒト大腸がん(HCT116)細胞の細胞膜に融合してアポトーシスを誘導し、増殖を著しく抑制することが明らかとなった。また、HL-23は、マウス骨肉種(LM8)細胞の仮足形成を阻害し、遊走・浸潤を抑制することが確認された。このように、がん細胞膜をターゲットとしたアポトーシス誘導の制がん機構が明らかになってきている。(2)in vivoにおいて、HLのヒト大腸がん(CRC)の肝転移モデルマウスに対する治療効果をin vivoで検討したところ、アポトーシス誘導による治療および延命効果が明らかとなった。さらに、蛍光ラベルしたHL-25を用いた体内動態試験において、腫瘍部位への長時間の選択的蓄積が明らかとなった。このように、種々の担がんモデルマウスに対する治療効果が得られてきている。さらに、医学部との活発な研究討議により、エイズ関連腫瘍の抑制に関する研究が進行しており、成人T細胞白血病 (ATLL, MT-4)細胞の肝転移モデルマウスに対する治療効果を検討した。肝臓重量測定、HE染色および免疫染色 (CD4, CD25) による組織学的解析においてHL-25の静脈投与により、肝臓での MT-4 細胞増殖を顕著に抑制することが明確となった。さらに、顕著な延命効果 (p< 0.01)、が明らかとなった。以上のように、当初の研究計画通りにおおむね順調に本研究課題は進展している。
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