研究概要 |
(1)リン脂質(DMPC)、トレハロース活性物質(DMTre)から成るリポソーム(DMTre)のヒト大腸がん(HCT116)および胃がん(MKN45)細胞の増殖に対する抑制性効果をin vitroで検討した。DMTre は、HCT116およびMKN45細胞の増殖を顕著に抑制した。一方、正常細胞には、影響を及ぼさなかった。DMTreの固定水層は、DMPCリポソームより大きく、用量依存的な増加が確認された。DMTreは、カスペース8,9,3を活性化してアポトーシスを誘導することが、フローサイトメトリーにより明らかになった。また、ミトコンドリアからチトクロムcの放出およびBaxの活性化が観測された。(Biol. Pharm. Bull., 36, 1258 (2013)) (2)DMPC、PEG系界面活性剤(C12(EO)21)およびカチオン性脂質(2C14ECl)からなるハイブリッドリポソーム(HL)のヒト大腸がん(HCT116)の肝転移モデルマウスに対する治療効果を検討し、以下に示す新しい知見が得られた。①カチオン脂質含有HLの静注により、大腸がん肝転移モデルマウスに対する治療効果が得られた。②組織学的解析により、カチオン脂質含有HLで治療した肝転移モデルマウスの肝臓内の腫瘍部分で、アポトーシス誘導が確認された。(Biol. Pharm. Bull., 3, 498 (2014)) (3)DMPC、DMTreから成るリポソーム(DMTre)のヒト肝細胞(HCC)がん(Hep-G2, Huh-7)細胞の増殖に対する抑制性効果をin vitroで検討した。①DMTreの固定水層の厚みは、DMPCリポソームより大きく、用量依存的方法が増加した。②正常細胞の増殖には影響を与えず、ヒトHCC細胞の増殖を抑制した。③DMTreは、カスペース-3、8、9を活性化して、ヒトHCC細胞のアポトーシスを誘導した。④ミトコンドリアからのチトクロームcの放出とBcl-2族タンパク質(BAX)の活性化が確認され、DMTreがミトコンドリアを経てBAXを活性化し、ヒトHCC細胞のアポトーシスを誘導したことが明らかになった。(Anticancer Res., 33, 4727(2013))
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