研究課題/領域番号 |
23300175
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
高取 吉雄 東京大学, 医学部附属病院, 寄附講座教員(特任教授) (40179461)
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研究分担者 |
中村 耕三 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (60126133)
石原 一彦 東京大学, 工学系研究科, 教授 (90193341)
茂呂 徹 東京大学, 医学部附属病院, 寄附講座教員(特任准教授) (20302698)
橋本 雅美 ファインセラミックスセンター, 材料技術研究所, 副主任研究員 (20450851)
小笠原 徹 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (20359623)
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キーワード | 医療・福祉 / ナノバイオ |
研究概要 |
本研究の目的は、独自技術であるMPCポリマーによるナノ表面処理を、PEEK表面に応用し、次世代運動器インプラントに応用するための基礎検討を完成させることである。今年度は、以下の検討を行った。 1.PEEK表面の至適MPCポリマー処理条件の検索:溶液濃度、処理時間等を変化させてMPC処理を行い、試料表面をX線光電子分光分析、赤外分光光度分析、原子間力顕微鏡で非破壊的に観察し、MPCユニットの同定および処理率を計測した。さらに分光エリプソメトリーまたは透過型電子顕微鏡)にて処理層の厚みを測定した。 2.MPCポリマー処理PEEKの荷重支持性の検討 1}PEEK厚がMPCポリマー処理効果に与える影響の検討:厚さの異なるPEEK板を作製しMPCポリマー処理を行った後、一軸、多軸の引張り試験、曲げ試験など、機械的強度を測定した。 2)衝撃耐久性の検討:衝撃耐久性を評価するため、ASTM F732に準じた衝撃-摩耗試験を確立した。現在、厚さ2.5mmのPEEK試験片を用いた衝撃-摩耗試験を行っており、平成24年度まで検討を継続する予定である。 3.MPCポリマー処理PEEK表面の耐摩耗性の検討:MPCポリマー処理したPEEK表面の耐摩耗特性を評価するため、今年度はまず人工股関節手術後の歩行を再現する股関節シミュレーターを用い、耐摩耗特性の検討を開始した。骨頭径は臨床上使用されている26mmとし、MPCポリマー処理したPEEKライナーと組み合わせて股関節シミュレーター試験を行っており、平成24年度まで検討を継続する予定である。 4.MPCポリマー処理PEEK表面の耐感染性の検討:インプラント表面が細菌とタンパク質を含む体液に接触すると、まず表面にタンパク質が吸着し、この吸着タンパク質層に細菌が接着する。そこで今年度は、MPCポリマー処理を施したPEEK表面のタンパク質吸着抑制を評価した。また、その考察を助けるためPEEK表面の親水性、表面電荷を、接触角測定、ゼータ電位測定により計測した。 以上の結果は、MPC処理PEEKを次世代運動器インプラントに応用するための基礎検討を推進する確信を得るに十分な結果であった。平成24年度は、上記の検討を継続するとともに、効果的なPEEK種類(コンポジット等)についても検討を加える予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究立案時の年次計画に沿って研究が進展しているため
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今後の研究の推進方策 |
1.PEEK表面の至適MPCポリマー処理条件の検索:23年度に引き続きPEEKのMPCポリマーによるナノ表面処理について至適条件を検索する。また、炭素繊維で補強したPEEK(CFR-PEEK)についても検討を開始する。 2.MPCポリマー処理PEEKの荷重支持性の検討:薄層化したMPCポリマー処理PEEKの機械的強度を評価するとともに、衝撃疲労試験を行い、衝撃耐久性を検討する。 3.MPCポリマー処理PEEK表面の耐摩耗性の検討:MPCポリマー処理したPEEK表面の耐摩耗特性を評価するため、23年度の股関節シミュレーター試験を継続するとともに、摩耗試験装置を用いた評価を開始する。 4.MPCポリマー処理PEEK表面の耐感染性の検討:PEEK製のdiscを作成し、MPCポリマー処理を行う。インプラント感染の病原菌である、バイオフィルム形成黄色ブドウ球菌、バイオフィルム形成メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、表在ブドウ球菌等を播種し、表面への付着抑制効果を検討する。
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