研究課題/領域番号 |
23300176
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
畑中 研一 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (70167584)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | オリゴ糖 / インフルエンザウイルス / シアリルラクトース / 細胞培養 / ガングリオシド / テトラフェニルエチレン / 診断分子 / クリック反応 |
研究概要 |
インフルエンザウイルスの抗体で修飾したマイクロビーズにヒト由来のウイルスおよびトリ由来のウイルスを吸着させた。これらに対して2種類糖鎖(α2→3結合したシアリルラクトシドおよびα2→6結合したシアリルラクトシド)を有する凝集誘起蛍光化合物を作用させ、フローサイトメーターなどを用いて検出した。特にトリ由来のインフルエンザウイルスに関しては、α2→6結合したシアリルラクトシドとの結合能を詳しく調べることにより、ヒト細胞への感染性を判断する用途に適しているかどうか検討した。 ドデシルグリコシドを「診断分子」として、各種薬剤(主に、糖転移酵素や糖鎖加水分解酵素の阻害剤)の副作用について調べた。本研究では、細胞内糖鎖合成の中でGM3に着目し、細胞内のGM3合成を制御する化合物探索手法を開発した。従来のHPTLCによるアッセイは煩雑で精度が低いことから、ハイスループットスクリーニングへの応用は不可能であった。そこで、クリック反応による蛍光基の導入とHPLCによるアッセイを組み合わせた新たなアッセイ系を構築し、これを用いた実際のスクリーニングを行った。本年度は、マウスメラノーマB16細胞と12-アジドドデシルラクトシドを用いて、東京大学創薬オープンイノベーションセンターからの化合物100種に対して、細胞内GM3合成に影響を及ぼす効果を検討した。その結果、細胞内のGM3合成に影響を及ぼす化合物をいくつか発見した。このことは、細胞内の糖鎖合成を制御する化合物(即ち、薬剤探索)の一次スクリーニングが長鎖アルキルグリコシドを用いて可能となったことを示している。 さらに、筋ジストロフィー症において欠損するオリゴ糖である4糖の合成を中空糸培養法により行った。オリゴ糖の精製に関しては検討中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、培養細胞を利用して合成される生理活性オリゴ糖を効率的に生産する方法を確立し、これらのオリゴ糖を利用して疾患の診断や治療などに寄与するデバイスを構築することを目的とする。 本年度は、上記目的に沿って、インフルエンザウイルスをターゲットとしたα2→6シアリルラクトース(ヒト型)およびα2→3シアリルラクトース(トリ型)をテトラフェニルエチレンと結合させて、マイクロビーズ上に固定化したインフルエンザウイルスと相互作用させ、凝集によって誘起された蛍光をフローサイトメーターで検出することを試みた。また、薬剤の副作用による糖代謝異常を検出することを目的として、細胞診断分子であるドデシルラクトシドにアジド基を導入し、細胞から放出されたオリゴ糖含有化合物をクリック反応で蛍光分子に結合させ、HPLCによって容易に診断できることを示した。本手法は糖鎖合成を制御する薬剤の一次スクリーニングにおいて優秀な方法であることも示した。 以上の結果より、研究はおおむね順調に進展していると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
【オリゴ糖鎖を有する医療デバイスの作製と性能評価】に関して、以下のような研究を行う。 (1)インフルエンザウイルスの抗体で修飾したマイクロビーズにヒト由来のウイルスおよびトリ由来のウイルスを吸着させる。これらに対して2種類糖鎖(α2→3結合したシアリルラクトシドおよびα2→6結合したシアリルラクトシド)を有する凝集誘起蛍光化合物を作用させ、フローサイトメーターなどを用いて検出する。特にトリ由来のインフルエンザウイルスに関しては、α2→6結合したシアリルラクトシドとの結合能を詳しく調べることにより、ヒト細胞への感染性を判断する用途に適しているかどうか検討する。トリインフルエンザウイルスの捕捉に関しては、空気中からの捕捉が可能なマイクロビーズの作製を試みる (2)ドデシルグリコシドを「診断分子」として、各種薬剤(主に、糖転移酵素や糖鎖加水分解酵素の阻害剤)の副作用について調べる。化合物群の中から細胞内糖鎖合成に影響すると思われる化合物を本研究で開発した一次スクリーニングにより選択し、実際の細胞内糖鎖合成にどのように影響するのかについて、投与料や時間変化などについて調べる。また、細胞内への取り込み量や取り込み速度に関しても調べる。
|