研究課題/領域番号 |
23300180
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研究機関 | 芝浦工業大学 |
研究代表者 |
吉見 靖男 芝浦工業大学, 工学部, 准教授 (30267421)
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研究分担者 |
長濱 辰文 東邦大学, 薬学部, 教授 (70145001)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | D-アミノ酸 / キラル識別 / 分子インプリント高分子 / 神経 / アメフラシ / ゲート効果 / 化学センサ / ナノ薄膜 |
研究概要 |
○アメフラシ食道神経にパルス電圧を印加して刺激し、運動神経の膜電位変化から、咀嚼運動に関与する中枢パターン発生器出力を検出した。この状態でD-アミノ酸オキシダーゼを加えると、興奮頻度が明らかに減少した。またD-アミノ酸オキシダーゼの基質であるD-セリンを加えたところ、興奮頻度が増加した。この結果より、アメフラシの咀嚼においてD-セリンが重要な役割を演じている可能性が示された。 ○インジウム・スズ酸化物電極に開始剤を導入し、鋳型(D-またはL-フェニルアラニン)、機能性モノマー(メタクリル酸およびジエチルアミノエチルメタクリレート)、架橋性モノマー(メチレンビスアクリルアミドおよびエチレングリコールジメタクリレート)の共重合体を表面にグラフトした。この電流をフェロシアン化カリウムの水溶液中でサイクリックボルタメトリーを行い、得られる電流値に与える、鋳型またはそのエナンチオマーの影響を調べた。その結果、2種類の架橋性モノマーを適切な比率でブレンドすることにより、電流が鋳型に対してのみ著しい変化を生じることが分かった。水系で困難とされる分子インプリント高分子によるキラル特異的センシングが可能になることが分かった。 ○白金黒をメッキしたくし形白金電極上で水を電気分解し、ポリジメチルシロキサン薄膜のダイアフラムバルブを駆動する電気化学ダイアフラムマイクロポンプを開発した。このポンプの吐出とその停止のタイムラグは0.1秒以下で有り、高速制御が可能であることが分かった。D-アミノ酸投与の有力なツールとなり得る。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
分子インプリント高分子によるキラル特異的センシングを、純水中しかもマイルドなpH条件で行うことは、今まで困難とされてきた。しかし本年度の研究において、従来まで水中で困難とされるキラル特異的センシングを実現した。これを架橋性モノマーのブレンドという全く新しい方法で実現した。また神経活動におけるD-アミノ酸の重要性を、検出しやすい神経ネットワークである中枢パターン発生器の出力で証明できることを見出した。また、水の電気分解を駆動源とした、高速応答マイクロポンプの開発に成功した。このポンプを神経へのD-アミノ酸高速局所投与に用いれば、神経におけるD-アミノ酸の役割に関する研究が高速に進むことになる。
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今後の研究の推進方策 |
D-セリン、D-アスパラギン酸など神経活動を司ると考えられているD-アミノ酸のセンシングを試みる。さらにセンサを微細化し、アメフラシの神経節内または神経細胞内のD-アミノ酸のセンシングを試みる。 また電気化学ダイアフラムマイクロポンプでD-アミノ酸(D-セリン、D-アスパラギン酸など)をアメフラシ神経節に投与し、それに対する中枢パターン発生器出力の変化を解析することで、各D-アミノ酸の局所的な役割を解析する、
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