研究概要 |
我々は,医療機器の超音波音場を可視化する新しい手法を提案し,その可能性を示すために,実験的に組み立てた簡易装置を使って検討を進めてきた.本研究では,臨床で実用されているより多くの診断および治療用装置の音場測定を行うことで,本手法の可能性と実用性を明らかにすることを目的としている.そこで本年度は,我々が考案した手法を溝尻光学工業所(以下溝尻)に技術移転し,一般的な技術者でも簡単に高精度測定ができる可搬性の高い装置の開発を行った. ・提案手法の技術トランスファ溝尻の技術者と打ち合わせを北海道大学で2回,溝尻光学で2回実施した.工藤が開発した手法と実験用装置の説明,これまでの研究内容の紹介,試作装置の要求仕様の明確化,開発スケジュールの立案などを行った. ・工藤と溝尻技術者の協議の元,治療装置および診断装置用の可視化装置の仕様を確定し,装置に使用する要素部品のレビューを行った. ・溝尻が音場可視化装置の具体化設計を行い,開発された装置を北海道大学に納入した.工藤が所有する超音波発生装置を用いて,試作装置で音場が可視化できることを確認した.治療装置と診断装置用に用いる水槽についても,可視化装置との関連が重要であることから溝尻で試作を行った. ・工藤の簡易実験装置を用いて,超音波音場のフォーカストシャドウグラフを種々の条件で撮影し,取得画像の基本特性を検討した.特に,超音波音場の位置を基準としたシャドウグラフ撮影用カメラのフォーカス位置と得られる画像の関連について検討し,フォーカス位置の設定が得られる音場像に重要な影響を与えることを確認した. ・光線追跡法によるシャドウグラフの特性解析にも着手したが,未だ十分な検討はできていない.今後も検討を継続する.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H23年度の最も重要な研究課題は,音場可視化法の基本原理と実験装置に関する技術移転(工藤から溝尻),可視化装置の仕様確定(工藤),製品の開発(溝尻)であった.種々の問題は生じたものの,年度末には治療用,診断装置用の試作装置が北大に納入され,基本的な動作を確認することができた.また,提案法で用いるフォーカストシャドウグラフ画像の基本的特性の解明も行うことができた.可視化用水槽については,可視化装置との関連を考慮する必要があるため,基本設計を工藤,西田が行い,作成は溝尻に依頼した.このように,予定した研究計画はほぼ実現できたため,研究はおおむね順調に進展していると判断する.
|
今後の研究の推進方策 |
H24年度は,開発した診断装置用および治療装置用音場可視化装置の基本的な特性を明確にするために,工藤が所有する強力集束型超音波発生装置と超音波診断装置の音場可視化を試み,強度や分布が異なる各音場の可視化に適した撮影条件を明確にする.その終了後からH25年度には,臨床用治療用装置を所有する施設の協力と,各種診断装置を所有する大学病院(研究分担者西田)の協力のもと,種々の臨床装置の音場可視化を行い,本手法の有用性を示す.また,時間波形,音圧絶対値測定の可能性,音場像の歪みの補正法,低コスト装置の実現可能性についても検討する.研究を遂行する上での問題点は,治療装置測定に協力いただける施設の確定,診断音場可視化に必要となる信号を装置から取り出すことについて機器メーカの協力を得ることであり,本年度はまずこの点にから着手する.
|