研究課題/領域番号 |
23300185
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
喜多 英治 筑波大学, 数理物質系, 教授 (80134203)
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研究分担者 |
小田 竜也 筑波大学, 医学医療系, 講師 (20282353)
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キーワード | がん温熱治療 / 磁気異方性 / 保磁力 / 表面修飾 / ハイパーサーミア / ヒステリシス損失 / ナノ粒子 |
研究概要 |
この研究では、細胞を加熱、殺傷する電磁誘導加熱癌治療実現を目的に高い発熱を可能とするナノ粒子材料を開発し、がん細胞への選択的集積法を検討・開発する。それを具体化するために、23年度は毒性の低い新規磁性ナノ粒子の開発、交流磁場の効率的利用と材料の発熱機構研究のため周波数可変磁場印加装置開発を中心に研究を行った。 1:強発熱ナノ磁性材料の開発 人体に対して毒性が低く(Coを含まない)、鉄だけからなる酸化物によって適度な保磁力を実現するために、形状磁気異方性を付加したナノ粒子を開発した(成果論文1件、特許出願3件)。大きさ軸比1:2~3程度の楕円体の形状を持ち.150Oe程度の保磁力を有する100nm以下の粒子が作製できた。磁場強度640 Oe周波数110kHzの高周波磁場下では、約600W/gの発熱を確認した。 2:交流強磁場発生装置の改良 幅広く強磁性ナノ粒子の開発と発熱機構の解明を行うために交流磁場発生装置を整備する。すでに200W級アンプを用いてフェライトコア(直径60mm)の10mmギャップ内に、最大磁場振幅315 Oe 20kHz-195kHzの周波数範囲の発熱計測を可能としている。一つの磁場発生コアを使う場合、インピーダンスがほぼ一定のため、動作周波数と最大磁場の積がほぼ一定となる。このため磁場発生コアを複数用意し、トランス等でインピーダンス変換を調整した結果、600kHz以下の周波数帯域において400-500Oeの磁場振幅を発生させることが可能となった。また試験的ではあるが本年度の目標20kHz-200kHz,600 Oeの交流磁場発生は達成された。1kW増幅器を購入し、磁場発生のための基本設計を行っている。 3:磁性ナノ粒子の癌細胞への選択的付着と集積 開発した磁性ナノ粒子表面へのPEG修飾を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Coを含まない発熱用ナノ磁性粒子の開発は順調に進んでいる。試験装置も最終目標とする周波数と磁場強度の範囲を、かなりの部分で達成ように開発が進んだ。ナノ粒子の表面修飾は、研究が始まった所である。
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今後の研究の推進方策 |
広帯域磁場発生装置が順調に整備できており、それを用いて測定した強磁性ナノ粒子の発熱の磁場強度依存性や周波数依存性から、周辺流体との摩擦による発熱(ブラウン緩和発熱)が分離可能と考えられる結果を得ている。これを確かなものとするためには、整備した交流電源を用いてダイナミック磁化曲線を測ることである。研究を継続してなるべく早い時期に装置を完成させたい。微粒子の表面修飾に関しては、広範囲に情報を収集して研究を進める必要がある事が課題である。
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