研究概要 |
この研究では、高い発熱を可能とする磁性ナノ粒子を開発し、がん細胞への選択的集積法を検討・開発した。平成25年度は鉄酸化物を主な開発対象としナノ粒子開発を行うと共に、交流磁場の効果的利用を目的とした。ナノ粒子発熱機構の分離・解明を可能とする周波数を広範囲に変えた磁場下での発熱特性と動的磁化過程計測のための装置開発を行い、作製したナノ粒子の計測・評価を行った。 1.強発熱ナノ磁性体開発: 形状制御を行った楕円マグネタイト粒子の開発により大きな発熱が得られたが、さらに粒径の微細化と保磁力の制御を進めてた。安定な水溶液分散体を作製するためにTetraehtlene Glycol (TEG)中での前駆体ゲーサイトの形状制御を行い、粒径を40nm以下に微細化することができた(発表論文1,3,4)。球形粒子に比べて表面積が大きい特徴を持つことから、表面修飾についても有望と考え、PEG修飾を行い、分散性の改善が認められた。 2.交流強磁場発生装置の改良とダイナミック磁化測定: 昨年度までの研究で開発した磁場発生装置により目標とした磁場は達成できた(発表論文5)。その装置を用いて試料の発熱特性を広範囲に測定した(発表論文2)。安定な磁場発生と放熱を効果的に行うために冷却装置を導入し、東大物性研の協力によりソレノイドの内部にピックアップコイルを導入し、動的磁化過程の計測装置を完成させた。超常磁性、強磁性の典型的な磁性流体の動的磁化測定を発熱測定と同じ条件で行い、その発熱量が磁化過程でよく説明できる事を初めて明らかにした。 3.磁性ナノ粒子の癌細胞への選択的付着と集積: 開発中の楕円マグネタイト粒子について、表面被覆としてPEG 修飾を行った。この粒子を用いてマウスに対する加温実験を行う準備を整えた。今後、速やかに集積度と発熱の実効性を確認する。
|