前年度までに開発したポリキャピラリーレンズを用いた蛍光X線分析装置を用いて,浮き草を対象とした2次元元素マッピング測定を行った.Coを500ppmの濃度で含む水溶液で栽培した浮き草の葉肉部と葉脈部をそれぞれ分析し,浮き草内のCo濃度が時間とともに上昇し,約1000ppmで飽和することがわかった.また,葉肉部と葉脈部ではCo濃度の差は見られなかった.一次X線の強度から浮き草の照射部での被爆線量率が0.1mGy/s程度であり,24時間の連続照射でも浮き草の形態に変化がないことを明らかにした.測定時間短縮のためのビーム電流の増強に向けて,タンデム加速器からの陽子線のビームエミッタンスを測定し,その結果を用いてCu標的上のビーム径を見積もり測定結果と良く一致することを見出した.このことから,偏向・集束用電磁石内部でビーム輸送が設計通りに行われ損失がほとんどないことを確認した.以上から,本研究課題において開発を進めているキャピラリーレンズを用いた高輝度単色マイクロX線源の原理実証に成功し,分解能や検出感度といった基本性能の向上のための技術的課題や装置改良の設計指針を得ることができた.
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