研究課題
昨年に引き続きVector Flow Mapping(VFM)を用いて左室内血流動態の定量評価を試みた。VFMを用いれば左室内の任意の部位における血流の速度とその方向を超音波ビーム方向と無関係に求めベクトルとして表示することができる。したがって隣り合ったベクトルの差から粘性摩擦によるエネルギー損失を算出することができる。正常左室における拡張期エネルギー損失を求め、さらに大動脈弁逆流を作成した動物において拡張期エネルギー損失が増大するか否か、またその増大の程度は大動脈弁逆流の程度を反映するか否かを検討した。麻酔開胸犬11頭を対象とし、心尖部長軸カラードプラ画像を取得し、VFMを用いて正常犬における拡張期エネルギー損失を計測した。ついで右総頸動脈より挿入したピッグテールカテーテルで大動脈弁を歪ませることで大動脈弁逆流を作成し、同じく心尖部長軸カラードプラ画像から拡張期エネルギー損失を計測した。大動脈弁逆流の重症度はパルスドプラ法を用いて逆流率を算出することによって評価した。正常犬における左室拡張期エネルギー損失は3.8 ± 1.6 N/s(n=11)であった。大動脈弁逆流例では逆流が重症になるにつれ有意にエネルギー損失が増大し、逆流率30%未満では13.0 ± 5.0 N/s(n=11)、30%以上では22.4 ± 14.0 N/s(n=9)と算出された。VFMを用いて求められるエネルギー損失は左室の仕事を評価する上で重要な指標となりうる。今後は左室全体が行う仕事量とエネルギー損失との比を求めることにより仕事効率の定量化が可能になると思われる。また左室形態や逆流の方向によらない新たな弁逆流定量的評価法が構築できる可能性も示唆された。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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