研究課題
本年度、新規に作製した細胞内在化抗モータリン抗体のエピトープ解析を2つの方法により行った。まず、V5タグモータリン欠損変異体を哺乳類細胞内で発現させ、細胞溶解液をモータリン抗体で免疫沈降した。これにより、抗モータリン抗体への結合に必須の80アミノ酸を同定した。次に、バクテリアを用いてHisタグ付組換えモータリンの欠損変異体を作製し、NTAアガロースで精製した。標準化した精製条件により、SDSゲル上で単一バンドの高純度タンパク質を得た。Hisタグ組換え変異モータリンタンパク質を基質とし、新規抗体を用いてELISA解析を行い、246-330及び375-415アミノ酸残基を含む2つの候補エピトープ領域を同定した。次年度、これらの領域からペプチドを化学合成し、最終的なエピトープを決定する。また、候補エピトープの1つに対する単鎖抗体を、バクテリア内で発現するHisタグ付き組換えタンパク質を作製することにより得た。この単鎖抗体のモータリンタンパク質に対する反応性を、ウェスタンブロッティングにより調べた。この単鎖抗体は、モータリンタンパク質に対し高い反応性を有したが、細胞内在化能は優れていなかった。これらのデータから、ウサギあるいはマウスにおいて生成された従来型の抗体が、より高い細胞内在化能を持つという結論に至った。今後、細胞内在化のメカニズム解明により、従来の単鎖抗体の細胞内在化におけるこのような差の原因を明らかにする。さらに、抗体の細胞内内在化効率を2つの方法により調べた。1つは、抗体をがん細胞培養液中に添加し、6-24時間培養後、2次抗体で染色した。2つ目は、Qdotsを結合させた抗体を細胞培養液に添加し、6-24時間培養後、顕微鏡下で観察した。本研究で得られたポリクローナル抗体及び3つのモノクローナル抗体のうち1つのクローンについて、両方法により細胞内在化が明らかになった。
2: おおむね順調に進展している
我々は、細胞内在化特性を有する新規抗体を大量培養、精製し、新規クローンの分子特性解析を成し遂げた。新規抗体のエピトープは約100アミノ酸まで絞り込むことができた。抗体の細胞内在化効率および経時的研究も順調に進んでいる。
新規に作製した抗モータリン抗体のエピトープを決定する。がん細胞、間葉幹細胞iPS細胞を標識するプロトコールを確立する。阻害剤を用いたアプローチにより抗体内在化のメカニズムを調べる。
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Int. J. Biochem. Cell Biol.
巻: 44 ページ: 496-504.